ボードゲームで歴史を学ぶ 『FREEDOM ~The Underground Railroad~』

『FREEDOM』というゲームを手に入れました。

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見るからにヘビーな感じですね。舞台は南北戦争前後の時代のアメリカで、黒人奴隷に関するゲームだということくらいは分かります。

ボクは基本的にどんなゲームかわからないゲーム、いわゆるジャケ買いをすることはまずいたしません。ほとんど日本で知られていないタイトルですし、当然日本語訳も出ていないですし。

ただ、このゲームについては以前から存在は知っていましたし、遊ぶというよりはボードゲーマーとして所有しておきたいゲームでありました。かなりデリケートなテーマを扱っていますし、日本語版が出ることは無いだろうという希少性。繰り返しになりますがこのテーマを扱ったボードゲームは今後も出ることは無いだろうと思っていますし、何よりボクが人種差別問題 とりわけ奴隷制度に関心があったからです。

まぁ、関心だなんて大層に言いましたが怒られるのを覚悟で申しますと、人種問題について特別に勉強をしてきたとか私的活動をしてきたわけではなく、ボクにとっては映画がきっかけの、エンタメとしての関心でありました。映画での黒人は貧困・反骨の象徴(アイコン)であり、その大きな瞳は常に悲しみと怒りをたたえ光輝いています。アニメのキャラクターを記号で見ているのと同じですね。前歯のない悪いサンタクロースみたいな腹の出た白人が下品な笑いを浮かべながら理不尽な暴力を黒人に振るう。それが最後には逆転し、白人に暴力で報復する、もしくは社会的制裁を与える姿を見てボクは溜飲を下げるのです。

ボクは特別、映画ファンというほど詳しく見ているわけではありませんが、『ジャンゴ アンチェインド』『グローリー』『グリーンブック』あたりはボクにとってのマスターピースです。

この前口上を見て怒る方もいらっしゃるかもしれません。しかしこれだけは言わせてほしい。どんなきっかけであっても「知る・興味を持つ」ということが大事だと思っています。そしてこのアメリカの人種差別問題は今も続いていて、その背景にあるのは150年ほど前の、つい最近まで公然と行われていた映画なんかよりずっと残酷で理不尽な行為です。ボクは映画をきっかけに奴隷制度や人種差別問題に関する映像や文献を調べるようになりました。

そんな感じで、このゲームを前から欲しいなぁと思っていたのですが幸運なことに先日、安価で手に入りました。ちなみにこの時点ではまだゲームのシステムについて何一つ把握していませんw

副題が『The Underground Railroad』とありまして、日本語サイトでは『地下鉄』と書かれていました。ボクはこれを見て「なんだよ直訳の誤訳かよww地下鉄はSubwayだろw」なんてpgrっていましたが、どうも調べてみるとこの時代『地下鉄道』と呼ばれる民間の秘密組織が実在していて南部の奴隷たちの逃亡を手助けしていたそうです。無知だったのはボクでしたね本当にすいませんでしたorz

当然、線路が敷いてあって列車が走っていたわけではなくてコードネームとして呼ばれていたようで、地元民も知らない秘密の抜け道を使って奴隷を導く地理に詳しい実働部隊は『車掌』と呼ばれ、奴隷をかくまうための住居や隠れ家を提供する人は『駅長』と呼ばれていたようです。まるで映画みたいなことが現実の世界で起きていたのです。

で、このゲームはプレイヤーがそういった地下鉄道のメンバーとなって規定ラウンド以内に決められた数の奴隷コマをアメリカ南部の農場から悪しき奴隷法が適応されない自由の地 カナダに逃がしてあげるという、協力ゲームとなっていました。

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(緑色のエリアが南部の奴隷州。南端にある農場に押し込められている奴隷コマをプレイヤーの能力やカードを使って北部へ移動させる)

(色の着いているポーンは『奴隷狩り』特定のルートに奴隷コマが入ると近づいてくる。これが奴隷に接触すると捕まってしまう)

和訳アプリを使ってチマチマとルールを書き起こしていたところ、全文ルールとカードの和訳を公開されている方がいらっしゃいまして、早速使わせて頂くことと致しました。

(素晴らしい和訳を公開してくださった4番ぱっくさんのツイートです)


このゲーム、アメリカでは学校で教材としても扱われているという話も聞きまして、ゲーマーですから実はゲームとしてはそんなに期待はしていませんでした。ソロプレイで何回か回し、友人4人集めて何度かプレイしました。

「面白いじゃないか(ニヤソ)」

ルールミスがいくつかあったのが悔やまれますが、非常にやり応えのある難しく良いゲームになっていました。詳細についてあえて詳しくはお伝え致しませんがwあと一歩のところでどうしてもクリアできない。人種問題はそんな簡単にゲームなんぞで解決できないよ!なんて作者の声が聞こえてくるようです。未だにクリアできていませんw

これは良いゲームだと確信したボクはもっと手を入れてみることにしました。

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(奴隷コマの色は元々クリーム色でした。遊んだ人はみんな「黒くないんだ」と言ってました。恐らく昨今のポリコレ対策なんでしょうがそんな半端な対策がむしろ失礼だと思ったので塗り直しました。より感情移入ができます)

ゲーム中はプレイヤーに様々な恩恵を与えてくれる(もしくは妨害する)カードが登場します。これらのカードはこの時代に起きた出来事や、奴隷制度について争っていた活動家や政治家を表しているのですが、いかんせん我々日本人に(申し訳ないですが)馴染みのない話でございまして、カードが公開されても知らない事なので いまいちときめかないのですw

ボクは以前マジック・ザ・ギャザリングというTCGをやっていました。魅力的なカードのイラストが好きだったのですが、特にカード下部に書かれているフレーバーテキストが好きでした。ゲームと直接関係は無くてもカードの世界観を端的にさらりと、ときにはジョークを交えて表現するのです。このフレーバーテキストが必要だと思いまして、ウィキやら和訳アプリでポチポチ追加していくことと致しました。そうすると「このオッサンそんなスゴい人だったのか!」みたいな発見もありまして、時間はかかりましたが楽しく書いておりました。

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(カードの名前と中央のカード効果が頂戴した和訳文。カード下部が新たに追加したフレーバーテキスト。元のカードにも解説を表していたフレーバーは書かれているが意味が分からない、カードに入りきらないところは自分なりの解釈だったりそのカードに関する人物の発言を載せてみた)

さて、そんな作業を進めていく中で、前から気になっているカードがありました。

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『ハリエット・タブマン』このカード以外にももう一枚、効果の違うカードが採用されていて別の名前でも(このカードは肖像画ですが)写真が採用されています。

書かれている効果がスタート地点からいきなりゴールできるという強烈なものです。TCGだったらSレア級の強さです。正直ハリエットタブマンが10枚あったらゲームに勝利できますねw 別のカードも非常に強いカードでありました。

複数枚採用されていて、このオバサンはきっとスゴい人に違いないと思って調べてみたら、思っていた以上にとんでもない人だとわかりました。

▪️ただの奴隷だったがひとりで自由州へ逃げきった。

▪️平和に暮らせばいいのに、ひとり戻って友人や家族を連れて無事に自由州に連れかえった。

▪️地下鉄道に参加後、『車掌』として何度も奴隷救出に成功。その間懸賞金をかけられながら一度も捕まらなかった。

▪️南北戦争では女性で、黒人で初めて一部隊の隊長を勤める。

▪️晩年は身寄りのない黒人の支援のために尽力する。

▪️2020年 アメリカ20ドル新紙幣の発行にあたり、彼女の肖像が黒人の女性として初めて採用された。(トランプ大統領の意向により延期となる)

日本人が知らないけどアメリカ人ならみんな知っている。くらいの偉人でした。記念館もあるようで、銅像も建っているそうです。そりゃあそうだよなぁ。


そして、この人の伝記映画がつい最近まで日本で公開されていたのです!

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日本公開が3月から(コロナの影響で6月からの公開)で、存在を知った&和訳を始めたのが9月の中頃でして、すでに劇場公開が終わっている頃でした。なんという時のイタズラ!!

どうにか見れないかなと思いまして調べてみたら関東では栃木でまだやっているということで(現在は公開終了)急遽見に行くことにしました!


…帰ってから11月6日にDVDが販売されることを知りましたww まぁ、良い映画でしたしパンフレットも買えたからヨシとします!b


ふとした出会いから興味を示し、そこから新たな発見を得る。このゲームに出会えたことを心より感謝しています。

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