『アメリカンブックショップ』は素晴らしい「カードゲーム」です。

今年初めて遊んだボードゲームを振り返る企画が某所?で開催されるにあたり、自分の中で最も面白いと思ったタイトルのランキングをつけるため現在思い返しているところなのですが、その中でカードゲーム。とりわけトリックテイキングの中で群を抜いて良かったと思えたゲームが『アメリカンブックショップ』でありました。

どんなゲームなのか?この記事を読んでいる方はボードゲーマーな方々でしょうから やったことないけど名前くらいは知っている、なんて方も多いと思います。

タイムリーな話であればパッケージやカードデザインが一新された新盤が現在も販売されておりまして、先のゲームマーケットでも販売されていたようです。

ゲームの内容については、ここで見るよりもずっと分かりやすく素晴らしいレビューサイトは他にもありますので、正しい評価はそちらを参考にしていただくことといたしまして(^ω^)

ここで書きたいのはボク個人のゲームに対する感想と、ゲーム以外の部分の評価であります。


■ゲームの感想■

引き算で作ったゲームだなぁと。細かいルールはいくらでも つけ足しできそうな作りなんですけど、最大の特徴である途中でトリック(トリックテイキングゲームのゲーム用語です)を切ってしまうルール、この一番面白い部分をとにかく最大限に生かそうとしたデザインになっていますね。

切り札(トリックテイキングゲームのゲーム用語です)もありませんし、トリテ(トリックテイキングゲームの略称でございます^^)の定石のようなものが通じません。逆に言えばトリテ初心者と上級者が同卓しても平等に楽しめると思います。

こういう面白いポイントが分かりやすく一点集中されているゲームは大好きです。ルールは全く違うのですが、かの名作『シュティッヒルン』に近いプレイ感でした。他のプレイヤーへ意図的に攻撃ができるのです。それが失敗して返り討ちに遭う感じも たまりません(´Д`)

各ゲームの終了時に発生するショウダウンも良い味付けになっていますね。点数が失点か加点かを迫られるようなギリギリの状況では特にシビれます。トリテではありませんが、名作『メンバーズオンリー』を彷彿とさせますね。


■ゲーム外での評価ポイントとは■

パッケージやカードデザインがオシャレ!
ゲームのストーリーを
綴っている小説がついている!​


…というところも もろちん素晴らしいのですが、今回書きたかったのはそういうところではなくて(´ω`)

このゲーム、説明書の書き方が実に素晴らしいのです。

トリックテイキングゲームは元々トランプカードを使ったゲームの1ジャンルの事を言っていて、カードの出し方やゲームの取り決めの中に様々な用語、トリテ用語というものが存在します。

古くから外国製・国産問わずゲームデザイナーが制作したオリジナルのトリテカードゲームが色々ございまして、ゲームの説明を聞くときには必ず「マストフォローでトランプ有り。スートが5つあって…」みたいな用語が飛び交います。スタ◯やデカ盛りのラーメン屋さんみたいですね(

用語で説明するというのはトリテの基本的な流れを知っている人間にとってはありがたいことで、説明の時間が短くなりそれを踏まえた上で それぞれのゲームの特徴を把握するのに集中できるわけですが、ス◯バやラーメン屋さんの例に漏れず無知はまるで罪であるかのようにトリテもそういったフォーマットを知っていないと満足に遊べません。

以下は、とある外国製トリテゲームの日本語訳説明書の一文です。

トリックとは

各プレーヤーは、順番に1枚のカードを手札からプレイします。これらのカードが「トリック」を構成します。

最初のプレーヤー、すなわちトリックを「リード」するプレーヤーは、手札の任意のカードをプレイすることができます。他のプレーヤーはその分野をフォローしなければなりません。

この一文の前後にトリテ用語についての解説を親切に挟みながらゲームの流れを説明しているのですが、かなり用語が多く書かれていることが分かります。

もちろんクサするためにあげたのではありません。トリテはハマる人はとことんハマる、かなり面白いカードゲームの一大ジャンルだとボクも思っていますから 上記の説明書はゲーム自体の説明以外にトリテを知らない人に是非知ってほしいという意思がつまったトリテの教科書も担っているのです。

そんなわけで文書が長くなるのは致し方ないし、これがトリテの一般的な説明書の形なのです。


さて、『アメリカンブックショップ』の話に戻ります。詳しい経緯は分かりませんが、この作品はあまり世に知られていない、部数の少ない書籍を取り扱う本屋さんに「本をお求めになるお客様へ、こういうのもありますよー」的な感じで、本屋さんに置かせてもらうコンセプトの元で作られたゲームのようです。

これはつまり、普段ボードゲーム・カードゲームをやらない人のために作られたとも言い替えられます。そういうのもあってか説明書には専門的なゲーム用語・トリテ用語が一切使われていないのです。

(デザイナーさんの他の作品をボクは持っていないのでわかりませんが、他の作品も用語を使わない書き方をされているのであれば、それはまた頭が下がります)

以下、説明書から抜粋。

親から順に時計回りで、カードを1枚ずつ自分の前に出していきます。この時、親が出した色のカードが自分の手札にある場合は、必ずその色のカードを出さなければなりません。

親が出したカードと同じ色が手札になければ、好きな色のカードを自由に出すことができます。

ー中略ー

そうして次はカードを獲得した人が新たな親となり、カードを1枚ずつ出していきます。

いかがでしたか?(←言いたかったw )いわゆるトリテ用語を全く使わずに分かりやすく説明しています。あえて用語らしいワードをあげてみても「カード」と「色」と「親」くらいでしょうか。

しかしこれくらいなら、カードゲームに多少なりとも興味を示した人間ならば誰でも分かるくらいのワードです。修学旅行でUNOや大富豪をやっていた人たちであればトリテを全く知らなくても、トリテ経験者を交えなくても仲間内だけで難なく遊べるでしょう。

ボードゲーム(もちろん人生ゲーム云々ではありません)はニッチな遊びでありますが、昨今はブームに加え遊びやすく洗練されたゲームも増えまして、特に動画配信が大きいと思うのですがボードゲーマーを介しなくてもゲーマーでない方々だけで遊ばれている報告や光景を目撃することが増えまして嬉しい限りでございます。

先日は部活帰りと思われる男子高校生のグループがバス停のバス待ちの最中、『コヨーテ』を遊んでいる姿を見て非常にホッコリした気持ちになりました。

そこにこの『アメリカンブックショップ』であります。説明書通りに遊んだ方々は無意識のうちに「マストフォロー」と「スート」と「リード」を学習し、トリテのままならなさを無理無く体感できるわけなのです!


■役目を果たせば邪道でも構わない

アメリカンブックショップのルールの話になりますが、感想のところでも書きました「トリックを途中で切る」というルールは、かなり斬新でありまして一部原理主義者wの間では邪道とされていますw

まぁボクはカジュアル勢wなんで、面白ければ何でもいいかなーと思いますし、これはボク個人が特に強く思ったのですが 特定の数字に達したら切り札?になるこのルールが非常に直感的で楽しいと思えたのですね。うまく言えないんですけど。

「切り札」という単語が出ました。先ほどからちらほら出ています。

これはトリテのルールの用語でありまして、そのゲーム内で特定の状況になったら、もしくは予め決められた色や数のカードが必ず勝つ というルールであります。

大抵のトリテには切り札有りというルールが採用されていまして、切り札を手札の中に蓄えておく。もしくは他のプレイヤーに来るべき時ではないタイミングで強制的に使わせる、みたいなプレイを楽しむのが一般的なトリテの遊び方なんですが…伝わりますかね?(

アメリカンブックショップは切り札「無し」のルールでありますが、代わりに出されたカードの合計値で切り札のような状況を作り出しました。

この「出ているカードの合計値を積み重ねる」手順が とても直感的なんですよね。このカード欲しい!と思ったときに仕掛けられる能動さが心地よいのです。

トリテ初心者がまず つまづくポイントがこの切り札だとボクは思っています。(専門用語になります)マストフォローで「仕方なく」出したカードが最強のカードで「取りたくないカードを取らされる」なんて状況を多々見てきました。上級者ならm9で済む話なんですが、初心者の方は意味が分からなくトラウマになってしまうと思います。

デザイナーさんがボクと同じ考えだったら嬉しいのですが切り札を採用しなかったのは意図的に感じるのです。

切り札でカードを取るより数字の積み重ねでカードを獲得する方が直感的に分かりやすいと考えたのではないでしょうか。

ですから本屋さんでこのゲームを見つけた、トリテを全く知らない人のほうがすんなり遊べるかもしれませんし、トリテを普段から遊んでいる人のほうが違和感を感じてしまうかもしれませんw

アメリカンブックショップは変則トリックテイキングでもなんでもありません。本のパッケージがとてもかわいい装丁の、とても面白いカードゲームなんですよ。

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