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その男、ホッファー

男は季節労働者だった。
夏は海で
秋は農地で
冬は漁港で
日銭を稼ぐ日々だった。

では、春は?
男は本の中に埋もれる。
文字に触れ、著者に触れ、体験に触れ、
咀嚼し、解釈し、再構築する。
自分の体験と、既存の知識と、未知なる希望と。
混ぜて、溶かして、新たな化学式を導き出す。

そうして、自分という溶鉱炉で溶かしたものを
再び言葉に流し込み、製鉄していくのである。

男の名はエリック・ホッファー。
沖仲仕の哲学者と呼ばれている。

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