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短編映画「カメラは止まったまま」

2019年、初夏。

「一緒に映画作りません?」

そう言ってきたのは女優・タレントで北海道を拠点にマルチに活躍する女の子[脇田唯]だった。

何やらカメラマンの[鹿野内太一]という男と映画が作ろうという話になり、主人公の男【慎平】役を務める人物を探していた時、自分に白羽の矢が立ったのだという。

以前、唯ちゃんが出演する短編映像「金魚鉢-たこ焼きシーン-」という作品の劇中音楽を担当させてもらったことや、映画音楽を作りたいと予々言っていたことを覚えていてくれたようで声を掛けてくれたのだ。

ちなみに更に前には、同じく唯ちゃんから舞台の出演オファーがありみっちり数ヶ月稽古をしたこともあった。(訳あって公演は中止となり稽古だけした結果になったのだが、これは今となっては良い酒の肴である)

撮る作品の脚本・構想は既に考えてあるという。

物語の概要はこうだ。

映画監督という夢を持つ主人公【慎平(しんぺい)】と幼馴染の女の子【頼(より)】。
慎平はなんだかんだ理由をつけては夢を先延ばしにし、頼はやりたかった女優やタレントとしての実績を着実に伸ばしていった。そんな慎平を焚き付ける頼と動けない慎平。
なぜ慎平は動けないのか…そして果たして映画を作ることはできたのか。

制作チームは自分を含めて全部で5人。

これが多いのか少ないのかはわからないが、目の届くほどの人数でそれぞれの役割を全うして一つのモノを動かすことは嫌いじゃなかった。

数回に渡って打ち合わせや本読みや修正を行い、本格的に撮影がスタートしたのは2020年の今頃。雪のぱらつく春の手前だった。

舞台の稽古をしたことはあるとはいえ、カメラを前に演技するのはもちろん初めてだし、まるで大きなひとつ目の怪物が今にも獲物である自分に襲いかかろうとしているかのようなレンズの黒い輝きに、演技の難しさを改めて思い知らされ、スナック菓子を頬張りながら片手間に見ていたブラウン管の中の往年のスター達への無礼を心の中で詫びた。

撮影を進めながら同時に考えなければならなかったのは、シーンごとに流れる音楽だ。今回は主人公を演じるほかに劇中曲、主題歌など"音楽監修"という役目も担うことになっていた。

僕は自分の好きな映画を好きな理由に、サウンドトラックの素晴らしさというものがめちゃくちゃ大きい。

ジョン・カーニー監督の「シングストリート」「はじまりのうた」「ONCEダブリンの街角で」、マーク・ローレンス監督の「ラブソングができるまで」、「美女と野獣」「アラジン」などディズニー名画の数々、スタジオジブリ。

大好きな映画には大好きな音楽がセットだった。

いつしかそんな映画音楽を作りたいと思うようになった。

この作品は約18分の短編作品となる。

最終的に主題歌を含めて、使われた楽曲数は7曲となった。

ここから1曲ずつ紹介していこうと思う。


「カメラは止まったまま」劇中曲ライナーノーツ

作中に流れる順に紹介していく。

1.「Rising」
札幌の街並み、そして無人の映画館に佇む慎平のシーンから作品はスタートする。終始ピアノのアルペジオだけで作ったオーバーチュア。
本当はもっと長く、ストリングスなど入った壮大な曲に仕上がったが、作品の尺の関係でショートバージョンを作り、フル尺のものはライブのSEとして使用したりしている。つくったものはどうしてもいかなる形でも聴いてもらおうとするのは、昔からずっと変わらない性だ。

2. 「Forgotten Box」
僕(慎平)と唯ちゃん(頼)の幼少期からのスライド写真と共に、頼のモノローグの後ろで流れる曲。遠い昔に押入れの一番奥に仕舞い込んだおもちゃ箱を開けたときのような、ブリキのオーケストラみたいな可愛らしい曲だ。耳を澄ますと色んな楽器の音が入っている。
写真はもちろん本当に自分たちの子供の頃の写真である。

3.「Drive!」
人物紹介〜タイトルの出る始まりのシーンで流れるギターロックなBGM。
この映画のテーマはOne Action、「最初の一歩」だと思っている。
自転車は最初のひと漕ぎ目が一番重い。初めて会った誰かとの会話も一言話かけてみれば意外とすんなり会話も弾み、めんどくさいシャワーだって一回お湯を浴びてしまえばたいして苦ではなくなるものである。
そんなOne Actionで走り出すことがきっと沢山あるのだ。

4.「Refrain」
慎平が夢を語り、頼が「その映画、撮ろうよ」と繰り返し繰り返し慎平を焚きつけるシーン。主題歌「はじまりの朝」のピアノインストの曲である。正直こんなに愛想尽かさずに声をかけ続けてくれるのは頼か仏ぐらいだろう。

5.「焦燥」
この物語の中で最もシリアスなシーンで流れるピアノインスト。
この曲だけ唯一この作品の為に作ったものではない。
元々はアルバムか何かで1曲目の前のプレリュードとして作っていた曲だ。一度だけライブのSEとして使用したことがあったが、今となってはどうしてこんな暗い曲でライブをスタートさせたのか自分でもわからない。
曲の終わり際の進行が気に入っている。
これは余談だが葬式帰りの二人の足元を映したシーンには"ある秘密"がある。当然喪に服す場面なのだが、撮影日に黒い革靴を持っていき忘れてしまい、履いていた色のついた冬靴しかなかった為、そのまま撮影し編集の[野川大地]くんに後日黒く色をつけてもらった。動画に色を付けるのは1コマずつ編集するという実に大変で根気のいる作業である。改めてこの場をお借りして詫び散らかしたい。

6.「Still in the Fog」
慎平が中々寝付けずに頼の言葉を反芻するシーン。
エレキギターのアルペジオとリバースディレイ(残響だけを逆再生した音)から始まる。走り出すシーンに合わせてツインギターのサビで盛り上がる。
ゴミ箱をいい感じに蹴っていい感じに中身が散らかるまでテイクを重ねた。
水たまりに映る信号を踏むシーンがお気に入り。(発案が採用されたから)
ちなみにこの曲だけ先出しで動画を公開している。

7. 「はじまりの朝」
主題歌。
映画のストーリーをヒントに、自分の人生も振り返りながら書き下ろした歌。自分の中にある"やるべき何か"に気づいていながら見ぬふりをして生きようとすると、朝陽は気持ちを盛り上げる爽やかなエナジーではなく瞼の裏から突き刺さってくるナイフになる。心の在り方が見える世界の在り方なのだ。
アコギで曲を作り上げたとき、この曲はアコギではなくエレキギターをメインで編曲しようと決めた。こちらもmovie ver.として編集したショートバージョンであり、ライブではフル尺で歌っているものの、バンドアレンジのフルバージョンも何かの形でぜひ聴いてもらいたいと思っている。

アミノアップ北海道監督賞

昨年の年始から制作を始めて、2020年秋に開催された札幌国際短編映画祭に出展。
【アミノアップ北海道監督賞】なる大変光栄な賞もいただいた。

コロナの影響で上映会が中止となり、オンラインでの上映となったが本当に沢山の方に観ていただき、有り難いお言葉も沢山いただいた。

協力していただいた出演者の皆さんや、公開に伴って広報に尽力してくださった関係者の皆さん、そして何より視聴者の皆さんに心からのありがとうを伝えたい。

「カメラは止まったまま」は現在札幌テレビ(STV)の公式アカウントにて2月25日(木) 24:59まで期間限定で無料公開中です!

是非、この機会に観て頂けたら嬉しい!

Watana Besta SOCIAL club

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『Soul Mate#3』開催決定!

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Watana Besta SOCIAL club 10th Anniversary 弾き語りワンマンライブ「Soul Mate#3」

◆2021年3月14日(日)
【会場】UNIONFIELD(札幌市中央区南7条西4丁目LC七番館5F)
【時間】開場18:30 開演19:00
【入場料】前売 2,500円/当日 3,000円
※別途1ドリンク/限定15名様 SOLD OUT
【プレミア配信チケット】1,500円/14日間見放題

▼ツイキャス配信チケット
https://twitcasting.tv/watanabestasc/shopcart/56395

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