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てのひら小説作品集

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愛媛の作家によるてのひらサイズの短い小説。 500文字以下の小物に印刷したら映えるサイズ。 それが「てのひら小説」です。 1000文字超えてても2000文字以上でも「いや、これが…
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2020年2月の記事一覧

行き止まりだ。もうおしまい。途切れた道で途方に暮れる。今来た道を下ればいいと気づくまでに時間がかかった。2度目の道は季節が代わり景色がまるで違ってた。なんだ。下りの始まりなんだ。終わりじゃなくてスタートなんだ。少しずつ顔が前を向く。花の香りや鳥の囀りに励まされ心は確かに上を向く。

オアシスを探して旅してたけどちっともたどり着けなくて。くたびれ果ててヤケになり同じ場所にいて笑ってる君を志が低いとバカにした。でもある日気がついた。地面から聞こえる水の音。今いる場所に井戸を掘ればいい。君と笑顔でツルハシをふるう。水が出ても出なくてもここはステキなハッピーシティ。

アドバイスに従えば「何様や」と罵倒する。会議の時間変更伝えても「こいつが教えんかったんや」と遅刻を人のせいにする。うちの上司は短期記憶が弱い。貴方のアイデアじゃないですかとも昨日伝えたじゃないですかとも言い返せない俺は気が弱い。リーマンライフ5年目の壁。いつか超えるさそのうちね。

闇の中にいる時は見えない鬼やお化けに怯える。朝になって初めて気づく。あの闇は希望の前の無だったのだと。だから怯えるな。震えるな。泣くな。歯を食いしばれ。全部頭の中の妄想だ。違うと言うなら刀を持て。切って捨てろ。心の鬼を。朝は来る。前に向かって進むものに未来はきっとやって来るから。

一度舞台に上がってしまったから踊り続けてみせる。自分からはおりないって決めたんだ。クルクルタララララン。フワッとターン。綺麗じゃなくても無様でもそこに立って動いてさえいれば誰かが私を見てくれる。笑われてもいい。笑わせればいい。舞台の上で死ねたなら、幸せな人生だったと心から言える。

「躓いた時に学びがある。全ては修行。より良く生きるための鍛錬なのじゃ」「毎日苦しくてたまりませぬがこれも耐えよと申しますか?」「その通り。全ては縁じゃ。言葉をさずけよう。それはな『ありがとう』じゃ。今後はそれだけ唱えれば良い」3年前の不思議な出来事。白髪の爺様。あれは多分福の神。

泥棒にあらされ、すっからかんな部屋の中。もう腹を抱えて笑うしかない。悪いのはどう考えたって俺のものをとってった奴なのに俺が苦しむっておかしいだろ。割に合わない。警察に通報して友達に喋って頑丈な鍵に交換して一生分の笑い話に仕立ててやる。それ美味しいじゃん、って言わせたら俺の勝ちだ。