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SHEPアプローチ研修に参加した話(週末振返り6/2)




先週は、丸々1週間

SHEP(Smallholder Horticulture Empowerment & Promotion:市場志向型農業振興)アプローチの研修

を受講にしに行ってきました。SHEPとは、野菜や果物を生産する小規模農家に対し、「作って売る」から「売るために作る」への意識変革を起こし、営農スキルや栽培スキル向上によって農家の園芸所得向上を目指す、新興国に対する農業支援手法の1つです。今回は、農家さんに対して主導的にこのアプローチを推進していくこととなるアフリカ各国の行政官向けの研修に4人のボランティアで参加させて頂きました。ボランティア以外の受講者はケニアでの研修より2週間先立ち大阪で研修を受けた後、ケニアでこの研修を受講しているとのことでした。
初日はナイロビで半日、座学で概要を学んだ後、実際のマーケットや既にSHEPを取り入れ成功している農家さんを見学するため地方都市ナクルに向かいました。

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ナイロビで講師との顔合わせ

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バス2台でナクルまで移動


研修の内容としては、市場調査⇒分析⇒耕作物決定⇒収穫カレンダー作成という、実際に農家さんに本アプローチを実行の際に行う一連の流れをグループに別れて実施し、途中実際の農家さんやその農地を見学し、お互いの気付きを共有し合うというものでした。
最終日はナイロビに戻り、各国毎に今後のプランや課題を発表し講師からコンサルティングを受け、各受講者が修了書を授与され修了しました。

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現場視察、調査、ディスカッションを繰り返します

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ケニアの畑初体験




研修受講前、このSHEPアプローチというものは『「作って売る」から「売るために作る」への意識変革』を目的とすることからもわかる様に、市場調査により需要を知り、農家が需要に適した農作物を供給することによって、市場原理に則った農業をする様に育成することが一番の目的であると考えていました。要するに、売れるものを作るという、至極当たり前のことをもっともらしい「SHEP」という名称と、国の予算まで付けて国際協力界隈でありがちな、予算ありきのプロジェクトだと考えていました。
実際に、体験した「市場調査⇒分析⇒耕作物決定」の流れは、お世辞にも「これで需要が理解でき、今後の事業収入が改善される」と思えるものではありませんでした。調査対象のN数が明らかに少ない(1作物に対して1人)、調査結果が耕作物決定のためのディスカッションの論点として反映されていない、等明らかにプロセス設計に不備がありました。農家さんとはこのプロセスを何度も行うとのことでしたが、丸二日要することプロセスを、農家さんが農作業を放り出して何十回と行うとは考えられません。
ただ、研修の途中で講師の方から教えて頂いたのは、「需要に合った農作物を決定すること」がSHEPの一番の目的でないとのことでした。勿論、市場を知らない農家さん達に市場を見て耕作することの大切さを啓蒙する意味はあるのでしょうが、これらのプロセスを通じて農家さんが論理的に正しい農作物を決定するのは到底無理なことなのでしょう。
では、何を目的にしているのかと言うと、これら過程を通じて農家さん達に農業による収入改善への動機付け、意識向上をはかることを一番の目的としていました。仮に、これらプロセスを経てもなお取り組み前と全く同じ作物を作ることとなったとしても、耕作物選定までの過程、市場調査や仲間の農家とのディスカッションを経て、自身が従事する農業の意味付けがかわることで、彼らの収入が改善されるということでした。SHEPアプローチではこの効果は『心理学の「自己決定理論」に裏付けされ』ているとしています。
実は、私が受講した行政官向けの研修にもこの「自己決定理論」は関連しています。つまり、彼らは帰国後、それぞれの国でSHEPの伝道師として、農家さん達を先導しに本研修を実施していかなくてはいけません。その簡単ではない大役を果たすためのモチベーション向上策として、日本~ケニアの3週間の研修が実施されています。研修終了時、修了書をもらう時の受講者の皆さんの嬉しそうな笑顔を見ると、しっかりと効果を発揮していることがわかりました。

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総じて、これら動機づけの手法は、農業だけ、アフリカだけでなく、一つの目的達成のために複数のステークホルダーを纏める際には有効な考え方であると思います。今後の活動や事業推進にも活用していきます。


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ナクル在住隊員と門限ギリギリまで、活動について熱く議論を交わし合いました

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研修終了後、人知れずナイロビで食べた天ぷらが最高でした。

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