【日記】あちらとこちら 2023.10.21

朝、ジジイに囲碁の入門書はあるか尋ねられて「囲碁なら795(NDLという図書の分類の数字)にあるので見ろ」と答えるもオススメを教えろと言って埒が明かないので、棚に案内した。

ジジイは政治だのゴシップだのを僕に語る。あんた若いんだから金を稼げと言ってくる。僕は金に興味が無いし、稼ごうと思って稼げるなら教えて欲しいと思う。

話題がすべてニュースで、自分にはまるで関係ないことに思える。お前は囲碁の入門書が欲しいのに僕に何を言ってるんだよと思いながら「そうでございやすね(春日)」と流しつつ入門書を五冊ほど渡す。そんなに沢山読めないと言うから適当に簡単そうなものを選別する。

若いんだからYOASOBIとか聴くだろと言われる。そういうのは聴かないと答える。若い趣味は興味が無いと答える。

若いんじゃないの?と言いながらじじいが僕の顔を覗き込む。
あんた30?と聞いてくる。
21、と答える。

ゴシップには興味無いですと言って本を渡し、窓口に戻る。それからようやく、自分が21ではなく、今年で23になることに気づく。意図せず鯖を読んでしまった。老いを感じる。年齢は着実に重なっている。苦しくなる。まだ若いんだからなんでも出来るだろという、あまりに浅慮でどうしようもないじじいの薄っぺらい言葉を、信じそうになるくらいに。


仕事を終えて親族との外食。歳を食った親戚のじいさんが、社会のゴシップと政治を語る。じじいはこれが兎に角大好きらしい。

僕の親族にじじいは、二人いた。二人は兄弟で、兄の頭髪は白く、弟の頭髪は黒かった。白いおじさんと黒いおじさん。幼い時分にそう説明された。

しかし、今となっては白いおじさんは老衰して杖が必須の状態で欠席し、黒いおじさんの頭髪は白くなっていた。老いを感じる。

白黒の兄弟は某大手広告代理店に居たので、割にそういう世界に詳しいらしい。僕が全く興味のない分野だ。
昔行った東京の飯屋のランチを、最近捕まった誰それに半額にしてもらい、八人で七万円だったとか、そういう話に親族は興味津々といった感じだ。やはり興味がなかった。

話の内容は月並みで下世話で、世俗的だった。別にそれについて不平を言いたい訳では無い。
ただ、僕はそういう世界にやはり生きているわけで、それを関係の無いものとして断ち切ることは難しいと改めて思わされた。


なにせ、世渡りの上手い彼らの金で僕は今日、高い肉を食べたのだ。それでいてそういう人々のことを愚かだとか言う気は毛頭ない。彼らは正しい人間なのだ。なんの揶揄もなしにそう思う。


外食を終え、母と弟が親族との談笑を続けるために祖母宅へと向かう中、僕は父用のテイクアウト料理を手に帰宅した。

父に弁当を渡す。母の所在を聞かれたので、みんな祖母宅に行ったと伝える。なぜお前は行かないのかと聞かれたので、興味が無いと答える。

大した話じゃなくてもいいじゃないかと言われる。無視する。祖父の法事のときにお前の話題をした、と言われる。ちゃんと働いてるとかそういう事を言ったらしい。貯金をしてるか不安だと言っていたらしい。

部屋をあとにし、猫に踏まれながらこれを書いている。変な充足感がある。


父が向こうで、一人弁当を食べている。

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