ハトとホウキ(以前の記事の修正版)

*以前の記事を少し修正しました。
*おかしなところを見つけたら修正します。


あるところに、アークという一羽の鳩がいました。
ある日、アークは病気にかかってしまい、それからは空を飛ぶことができなくなってしまいました。
友達の鳩達が、空を楽しそうに飛んでいるのを見て
アークは「僕も、あんな風に空を飛べたらいいのにな」と思っていました。

ある日、友達の鳩たちが、アークに尋ねました。
「アークは、どうして空を飛べないの?」
「本当に病気なの?」
「飛ぶ練習を、していなかったんじゃないの?」
アークは、その場から逃げ出してしまいました。
「僕が、どんな気持ちで、みんなのことを見ているのかも知らないのに」
「僕だって空を飛べるのなら、みんなと一緒に飛びたいよ」
アークは、泣きながら走っていました。
気がつくと、見知らぬ場所に迷い込んでしまいました。
「ここは、一体どこだろう」
アークは周囲を見渡すと、一本の箒に目が留まりました。

アークが箒に近づくと、箒が話しかけてきました。
「こんにちは」
アークは驚いて物陰に隠れてしまいました。
「驚かせてごめんね。私はモーレっていうの」
「怖がらないで、こっちにおいで。お話しよう」
と箒は言いました。
アークは、ゆっくりと箒に近付きました。
「名前は何ていうの?」
「僕はアークだよ」
「分かった、アークだね」
「うん」
「アークは、どうしてこんなところにいるの?」
アークは、これまでの出来事を、モーレに話しました。
「悲しかったよね。悔しかったよね」
アークは、また泣き出しそうになりながら、モーレに尋ねました。
「モーレは、ここで何してるの?」
「魔法使いさんに頼まれたお使いから帰る途中で、疲れちゃったから休んでいるの」
「そうなんだ」
「ねぇ、アーク。私を見て何か気が付かない?」
「え?」
アークはモーレをよく見てみました。
すると、モーレの毛が少ないことに気が付きました。
「気が付いた?」
「うん」

モーレは、自分のことを話し始めました。
「私は箒として人間に使われていたんだよ」
「でも、毛が少なくなっちゃってね」
「箒として使えなくなったから捨てられたの」
「モーレも大変だったんだね」
アークは、悲しい気持ちになりました。
「でもね。私は魔法使いさんに拾われて、魔法で空を飛べるようにして貰えたの」
「だから少しでも、魔法使いさんの役に立ちたくて、お使いをしているんだよ」
「僕も魔法使いさんの魔法で、空を飛べるようにして欲しいな」
アークがつぶやくとモーレは言いました。
「アークはどうやってここまで来たの?」
「どうやってって・・・走ってきたんだ」
「遠いところから走ってきたんだよね?」
「そうだよ」
「空を飛べなくたって、アークには、まだ出来ることがあるよ」
「僕にできること?それって・・・」
「走ることができるでしょう?」
「うん」
「どんなに頑張ってもできないものは仕方がないよ」
「できなくなったことばかりを見ないで」
「できることを、もっと見てほしいの」
「そうだよね」
「僕にはまだ走ることができる」
「できることを頑張れば良いんだ」
「アーク。分かってくれた?」
「うん。分かったよ」
「モーレ、ありがとう」
「どういたしまして」
アークは気持ちがすっきりしました。

「僕は、そろそろお家に帰らないと」
いつの間にか、もう夕方です。
「でも帰り道が分からないよ」
困っているアークを見て、モーレは言いました。
「私がお家の近くまで送ってあげるよ」
「近くまで行けば後は帰れるよね?」
「うん」
「じゃあ私に付いてきてね」
「分かった」
モーレは宙に浮くと、アークを気にしながら、ゆっくりと空を飛び始めました。
アークは、モーレに走って付いていきました。

ようやく、いつも友達の鳩たちと遊んでいる野原に着きました。
アークは、モーレに、お礼を言いました。
「モーレ、ありがとう」
「どういたしまして」
すると、モーレも、アークにお礼を言いました。
「アーク、ありがとう」
アークは、なぜ、お礼を言われたのか分かりませんでしたが
「どういたしまして」
と言いました。
「じゃあね、アーク」
モーレは、宙に浮かび上がりました。
「モーレに、また会えるかな?」
「きっと会えるよ。アークが願っていればね」
そう言うと、モーレは空を飛んでいきました。
アークは、モーレが見えなくなるまで見送りました。

次の日、アークは友達の鳩たちが、空を飛んでいるのを見ていました。
しかし、見ているだけではありません。
飛んでいるみんなを追いかけています。
なぜなら、アークには、まだできることがあるからです。


最後まで、お読みいただきありがとうございます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?