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大山独楽(神奈川県・伊勢原市)_20190220

少し間が開きましたが、関東地方の最後を飾るのは、神奈川県伊勢原市でつくられる「大山独楽」です。

コマをわざわざ張子にしても回るわけもないのですが、、
あときれいな円の線を筆で描くのってべらぼうに難しいですね。

だからこそロクロを使い高い技術で木を削り出し彩色するこのコマの美しさに魅了されます。

なんか落語みたいだな...

僕がいま47都道府県各地の郷土玩具を張子でつくるというのは、古典落語を演じるようなことではないかと思っています。

ある郷土玩具が発生した時代背景や風土を踏まえつつ、現在も作り続ける"名人"や"無名の工人"たちの技がどういうものなのか、自分の手のひらで感じとりながらつくっています。

また郷土玩具ではなく『今日の玩具』としてつくっているシリーズは、言わば新作落語です。

郷土玩具の中にある「信仰」や「遊び心」や「歴史性」などを、現代のトピックでつくるとしたら、という大喜利みたいな感覚でつくっています。

『今日の玩具』なので「歴史性」が軽薄なのは仕方ないとして、時事的なもの、あるいは古典的なものを更新するようなものをうっすら意識しています。

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落語『大山詣り』でも出てくる大山

さて大山独楽に話を戻しましょう。

落語で『大山詣り』という有名な噺があります。古典落語に数えられる噺です。三代目古今亭志ん朝も演っていますね。

博打と商売にご利益があったといわれ、江戸時代には大勢の江戸っ子が参詣したと言われる大山阿夫利神社

その「大山信仰」の土産物として、伊勢原に住む木地師(山に入って木を切り、和製轆轤(ろくろ)を使って、木からお椀やお盆といった「木地」を作る職人のこと)のつくった家庭用品やコマなどの玩具が重宝しました。

大山独楽の今昔

中でも大山独楽は非常によく回ることから、「金運がついて回る」との縁起にも結び付けられ、大山信仰として大変な人気を呼んでいたそうです。

また角がないフォルムなので"家族円満"、芯棒が太く長いので"辛抱が太く長くなる"というご利益も込められているようです。

そんな大山独楽の制作技術は伊勢原市の無形民俗文化財に指定されています。

その背景には昭和初期には30軒以上あった製作者が、2017年の時点で4軒ほどでみな平均年齢も高く、後継者不足の問題があり、伊勢原市は職人の育成やPRに力を入れているようです。

こういう問題は全国的にあると思うのですが、職人だけがいても厳しくて、素材を扱ったりつくったりする人たちなども必要で、昔は地域全体で分業したりしていたのでしょうけど、そういう分業の規模が大きいものほど、時代の移り変わりで消えていってしまいがちな気がします。

もちろん需要の問題や、ツーリズムの変化、技術継承の難しさなどさまざまな要因があると思います。

以下は伊勢原市制作の映像で、大山独楽の制作過程などが見ることができます。

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東日本クリア!明日からは中部地方です。江戸時代の話が多かったですが、西へ行くにつれて徐々に都(京都)や古事記の世界なども触れていくことになるかと思います。


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