スケッチから始める_20190207
そういえば・・・
張子とは?とか張子の作り方は?郷土玩具とは?など、本来ならこの「てのひらのしわざ」を開始する一番はじめに伝えなければいけないのですが、行事の多い1月に開始して忙しかったこともあり、まだできていませんでした。
特にそういった説明もないままにつくったものを矢継ぎ早にリリースしている現状で、それはまた別の機会にくわしく書きたいと思います。が、ごくごく簡単に書いてみたいと思います。
張子とは?
張り子、あるいは張子(はりこ)とは、竹や木などで組んだ枠、または粘土で作った型に紙などを張りつけ、成形する造形技法のひとつ。中空になっており、外観と比較して軽いものが大半を占める。「はりぼて」とも。張り子の技術は2世紀に中国に始まり、アジアやヨーロッパに伝わったといわれる。日本には平安時代頃には中国から伝来しており、産室に犬筥(いぬばこ)が飾られたことが知られている。日本全土に分布し、郷土玩具などに用いられている。
仕組みだけ話すととても簡単です。
1.「型」+「紙」=「型+紙」(ある型に紙を貼る)
↓
2.「型+紙」ー「型」=「紙」(型を取り除き、紙でできた中空の立体物にする)
↓
3.「紙」+「色』=「張子」(色を塗って張子の出来上がり)
なんだこの式は。わかりやすいのかこれ。
まあ仕組み(式)は実にシンプルなのですが、「貼る」「取り除く」「立体物にする」「塗る」など、作業自体は結構多いのです。
これ以外にも「型をつくる」や「乾かす」といった作業もあります。
張子の型
特に「型」というものが張子にとっては肝で、張子のフォルムなどを決めるのでとても重要です。
郷土玩具をつくる職人さんや工房は、代々受け継いだ独自の型(主に木製)を持っており、その形自体がアイデンティティである張子もあります。
僕は粘土で型をつくることが多く、特に全国の郷土玩具を張子にするシリーズでは、ひとつひとつ粘土の型をつくって制作しています。
これまでつくった張子の粘土型の一部ですが、紙を貼られた型を抜く際に、カッターを使用するので切れ込みが入っています。ラップは紙と粘土型が剥離しやすいように、紙を貼る前に巻いています。
※工程のていねいな説明はいずれ近いうちにしたいと思います。
張子の型をつくる前にスケッチを描く
僕の場合、これらの粘土型をつくるときに、郷土玩具などすでに存在するものがある場合は参考資料を用意するのですが、それを見ていきなり粘土をこねることはありません。
まずスケッチをして絵(二次元)にしています。特に疑問にも思わず、張子制作のごく初期からこれをしています。
以下はスケッチの一部です。
なぜスケッチを描くのか
すこし前までは、配色なども書き込んでいて、設計図的な性格もあったのですが、最近は作業計画が必要な複雑なもの以外は、絵を描くだけになっています。
ただでさえ工数の多い(乾き待ち時間まである)張子制作で、この作業時間は効率的にはどうなんだろうとも思いますが、改めて考えるとですね、これは対象の抽象度を高める作業として必要不可欠だったのです(あくまでも僕にとっては、ですが)。
「参考資料」と「僕が描いた絵」の違いは、
・色がない
・影がない
・写真に写ったすべてを描いていない
粘土をこねて型をつくるのに、色や陰影などのディテールを知る必要はありません。形をとらえ、対象が持つ構造をわかることができれば事足りるのです。
これをするために絵を描いているわけですが、張子は絵の通りにはならないままならさがとても面白いです。さらに抽象度が増幅されるので。
ですので、張子をつくると同時に、絵という別の作品的なものが残ることで、ちょっと得した気分になります。
今後はこれらのスケッチを元に着彩画や版画もやってみたいと思っています。
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玩具絵の巨匠たち
ちなみに郷土玩具の世界では、たくさんの玩具絵を描いた巨匠が何人かいます。
清水晴風(しみず せいふう)
明治時代に自ら「玩具博士」と称し、全国の郷土玩具を紹介する「うなゐの友」を出版しました。(「うない」とは、幼い子の髪型をあらわす古語)
その背景には、江戸が終わり廃藩置県となり、藩の庇護がなくなった郷土玩具の作り手の減少と、海外から入ってくるブリキやセルロイド製の玩具に圧されていた郷土玩具の当時の状況があったと言われています。
ちなみにモノクロですが、「うなゐの友」はネットでも閲覧できます。
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川崎巨泉(かわさき きょせん)
もとは浮世絵師で、大正時代に多くの玩具絵版画を残しました。
とても魅力的な川崎巨泉の絵は、いまでも手軽に見ることができます。
また巨泉の生まれた大阪の府立図書館のデータベースがすごいです。
①「詳細検索」をクリック
②適当な画題を入力(今回は「猫」)
③いっぱい出てくる(82件も。。)
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武井武雄(たけい たけお)
この人は「郷土玩具」だけでおさまらない大作家ですけども。郷土玩具の大コレクターで(関東大震災で全て灰塵となってしまいました)、日本のみならず、世界中の玩具や寓話から影響を受けたであろう、多くの童画や版画をつくりました。
昭和五年(1930年)に出版された『日本郷土玩具 東の部』(『〜西の部』4年後に出版)は、郷土玩具本の決定版のような存在で、「郷土玩具」という言葉が定着したのは、この本によるところが大きいと言われています。
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