赤色の他人、きみはいつも返事をしない

瞼をいったりきたりさせて、
きみをかじる
記憶の淵で逃げ回る赤い影を追う
頭の底にあるのは
かつてぼくらが属していた星

ホームに突き抜ける鉄塊に轢かれ
星を脱した
一番乗り
きみは、
かなり、
賢かった
知らないとは、いつも匿名の匂いだと
果てのない力があると、
言う。

(ことばは蒸発、
口から吐けるものが夜だけだった通り魔は、
地球に、
標本をつくるみたいにして、
遠くで他人を刺しました)

逆らって夕景、
鉛筆で水平線を焦がしながらゆく
かつての星にぶら下がったままに
まだ瞑って、瞑って
絡まった運命をちぎって唱えたさようならは
同じ景色を眺めているからもう、
会えないぼくらだ。
さようならは
どうしたって呼吸を無視する不完全なリズムになるから
会えないぼくらだ。

血ぬれのため息が
空で揺れて街変わる頃
反対ホームに追いついた
日々を通過する勇気
握りしめた拳が割れないように食いしばる
きみの辞書は悠々と風を孕み、
先から先まで覚えていないふりをする
ナインティーン、いい加減に…
途切れ途切れの叫び声が
喧騒のなかで燃えたのを見て、
思い切って伸びる影を踏んだ

……赤色の人、赤色の人、
新しい星が、
見えますか?
若さはいつか亡骸と化す

歯列にまたがった言葉の奥では
きみとだって他人さ、
もういいよ、
さようなら
さようならをするのだ赤色の

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