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第91位『綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー①~③』綾辻行人・有栖川有栖

斯界を代表する2人が〝本格愛〟を込めて贈る、読むMystery Radio

【内容】
 〝新本格〟の代名詞的存在である2人が古今東西の名作短編ミステリを〝名曲〟に見立てて紹介・解説していく、ディスク・ジョッキー風ミステリ案内。

【ここが凄い!】
 綾辻行人と有栖川有栖という90年代のミステリ・シーンを牽引してきた2人が、ディスク・ジョッキーならぬ〝ミステリ・ジョッキー〟となって、数々の名品・佳品・珍品を〝プレーヤー〟にかけていく好企画。採録作もコナン・ドイル「技師の親指」、エラリー・クイーン「ガラスの丸天井付き時計の冒険」(共に『①』所収)といった名作から、犯人当ての珍品・南條範夫「黒い九月の手」(『①』)、大川一夫「ナイト捜し」(『③』)、自作「黒鳥亭殺人事件」、「意外な犯人」(『②』)等、幅広くアンソロジーとしても読みでがある。一方で、竹本健治「恐怖」や井上雅彦「残されていた文字」(『①』)、又はラヴクラフト「アウトサイダー」や小松左京「新都市建設」(『②』)等、〝奇妙な味〟の諸編も数多く収められておりレンジが広い。読書会として読んでもよし、アンソロジーとして読んでもよし、創作論として読んでもよしと、いろんな愉しみ方ができるのが最大の魅力だ。

【読みドコロ!】
 全3巻の中では、花園大学での公開講座を収録した第5回「特別編 公開ライブ!」(佳多山大地氏の名推理!)や北村薫氏をゲストとして招待した第8回「アンソロジストの愉しみ」を含む「②」が充実。リドルストーリー・巨匠の怪作・埋もれた犯人当てと、作品も多士済済だ。

【次に読むのは?】
 本企画に近しいアンソロジーとして、北村薫が編纂し解説を付した『謎のギャラリー』シリーズ(新潮文庫)がある。読み比べてみるのも一興。また、この名コンビが合作したミステリ・ドラマ『安楽椅子探偵』シリーズ(KADOKAWA)は必見。特に《メディアならではの仕掛け》を駆使した第6作『ON AIR』の完成度は抜けている。

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