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第96位『本格力』喜国雅彦・国樹由香

〝本棚探偵〟がお送りする本当に面白い古典ミステリぶっちゃけトーク

【内容】
 長年に渡って本格ミステリを研究している《坂東善博士》と普通の女子高生《りっちゃん》が〈現代でも通用する古典本格ミステリとはなにぞや〉を語り合う異色のブックガイド。

【ここが凄い!】
 破天荒な書物である。何しろ、評価の定まった古典本格ミステリたちも、普通の女子高生《りっちゃん》にかかると、《つまらない》《ダメ》《どこが面白いの?》と次々一蹴されていくのだ。甚だしきは《途中で読むのをやめた》! 真面目なミステリ・ファンであれば噴飯ものであろう。しかし、この書物の中では、これが正解なのだ。なぜなら、この本が「全くの初心者が古典本格ミステリを読んだらどう感じるか」という思考実験であるから。そして、そうした読みは我々ミステリ・マニアが、その知識や経験によって見失っているものを教えてくれるのである。

【読みドコロ!】
 曇りのない目で古典を眺めた時、初めて第十八回「カーの不可能犯罪」の『三つの棺』評のような新鮮な読みが生まれる。この章から「ホームズのライヴァルたち」を読み直す第二十六回までが本書のハイライトであろう。また「エンピツでなぞる美しいミステリ」「ほんかくだもの」「勝手に挿絵」等、おもしろコラムもあって飽きさせない。

【次に読むのは?】
 なんといっても、重度の古書マニアの生態を描いた《本棚探偵》シリーズ(嗚呼、日下三蔵邸!)が見逃せない。また、抱腹絶倒のミステリ・ギャグ漫画『メフィストの漫画』も忘れてはいけない。特に日本で一番有名な被害者が登場する〝あの話〟は声を出して笑ってしまった。

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