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『奇面館の殺人』綾辻行人

感じるのは懐かしさよりもシャープさ。綾辻行人の美味しいところがワンプレートに【69】

 若々しいなぁ、というのが第一印象。これだけのキャリアがあると、小粒なトリックと多少気の利いたロジック、あとは筆力で誤魔化す、みたいなことをしたって許されそうなものなのに、敢えてこの冗談みたいな発想を選択し、それをシンプルな論理の組み合わせで解明していくフレキシブルさ。それでいて、その冗談のような発想を小説世界に見事に定着させていく怪奇幻想的筆力の確かさ。ある意味では、作者の美味しいところを一作で堪能できるワンプレート・ランチみたいな佳作だ。

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