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ベンチを温める日々、掴んだチャンス…”控えGK”ダーロウはナンバーワンになれるか

今シーズンのニューカッスルで一番活躍している選手は誰かと問われれば、多くのサポーターが2つの名前を挙げるだろう。1人はボーンマスから加入し攻撃を牽引するFWカラム・ウィルソン。もう1人は開幕前までバックアッパーだった、GKカール・ダーロウだ。

ダーロウは2014年の夏にノッティンガム・フォレストからニューカッスルへの移籍が決まり、1シーズンのローンを経て正式にマグパイズの一員となった。しかし、25歳のキーパーがすぐに出場機会を掴むことはなかった。当時、ニューカッスルの守護神はオランダ代表にも選ばれていたティム・クルルであり、彼の牙城を崩すことは難しかったのだ。

ダーロウは先日、ラジオ“Process”のインタビュー内でニューカッスルでのキャリアについて語っている。

「ここに来た時はまだ若かったし、ティム・クルルが何年もナンバーワンとして活躍していたからね」

「どちらかといえば、最初のシーズンはプレミアリーグの選手と比べて自分がどの位置にいるのかを知ることに重きを置いていた。もちろんプレーしたいという野心は持っていたけど、移籍してティムがトップに君臨している状況で、僕は完全に彼をサポートすることにしたんだ」

「彼から沢山学びたいとも思っていたしね。長年いい仕事をしてきた選手だったから。質の高い選手たちのプレーから吸収し、自分がそこに適応していくことが重要だった」

そんな若武者にチャンスが巡ってきたのは2016年。チャンピオンシップに降格したチームは、ロブ・エリオットの負傷と新加入GKマッツ・セルスの不調により、ダーロウを起用することになる。最終的にリーグ優勝を成し遂げるチームにおいて彼は正守護神としての立場を確立し、一気に評価を上げることとなった。

しかしマグパイズがプレミアリーグへ復帰した17/18シーズン、ダーロウのキャリアにターニングポイントが訪れる。冬の移籍市場で後のナンバーワンとなるマーティン・ドゥーブラフカが加入したのだ。

スロバキア代表でもゴールマウスを守るドゥーブラフカは、加入直後のデビュー戦でスーパーセーブを連発し、マンチェスター・U相手の勝利に大きく貢献。この試合を境に、スタメンは彼が務めることになり、ダーロウは完全にセカンドチョイスへと降格してしまったのだ。

「あの時期は辛かった。グラウンドではハードワークを繰り返したし、メンバーに入ろうと頑張ったけれど、それは実現しなかった。僕が言えるのはそれだけだ」

ダーロウはそれ以降、2年半もの間ベンチからチャンスを待ち続けることになる。そして2020年夏、プレシーズンで負傷した正守護神にかわり、ついに待ち侘びたプレミアリーグでの出場機会が回ってきたのだ。

今シーズン、全てのリーグ戦でプレーするダーロウはチームを救うパフォーマンスを何度も披露。セーブ数は11月17日現在、リーグ2位の「51」。ディビジョンのベストキーパーの1人となった。

ドゥーブラフカの復帰が近く今、スティーヴ・ブルースにとってゴールマウスに誰を立たせるかは最も悩ましい選択だろう。これについてサポーターの間でも意見は別れており、この数ヶ月で2人のパワーバランスが大きく変化したことは間違いない。

ダーロウは先日、これ以上ナンバーツーに甘んじるつもりがないことをメディアに公言した。

「できることなら全ての試合でプレーしたい」

「毎週必死に練習をした結果、何もしないのはタフだ。いつだってチャンスを待っているけれど、マーティンが毎試合あのようなプレーをしている中でそれは自分で決められることではない」

「彼は怪我をすることもなかったから、プレーし続けていた。僕にとっては、彼の負傷や不調に備えてハードワークを続け、ひたすら準備に徹することしかできなかったんだ」

「このクラブでプレーできると証明するチャンスを待つだけで、時間はどんどん過ぎていった」

実は、彼の祖父であるケン・リーク氏も、かつてマグパイズのユニフォームに袖を通した選手の1人である。ウェールズ代表のフォワードだった彼は1961年の夏にレスターから加入し、親善試合でハットトリックを達成し鮮烈なデビューを飾ると、その後公式戦13試合で6ゴールをマークした。在籍は僅かに半年という短さだったが、印象的なプレーヤーとして記憶されている。そして半世紀以上が過ぎた今、再び家族の一員がチームの歴史に名を残そうと必死になっている。

チームをプレミアリーグへ引き上げたにもかかわらず、その後まともにプレー機会を得られないまま、3年近くの時をベンチで過ごしたダーロウだが、クラブへの愛を忘れることはなく、開幕前には新たな5年契約を結んで忠誠を示した。そして、ハードワークを惜しまなかった彼にチャンスは訪れた。

今後、2人の”ナンバーワン”による熾烈なスタメン争いが待っている。数シーズンにわたりサイドからピッチを眺めてきた彼に失うものなど何もない。このチャンスを最大限に活かし、序列を変化させる準備は整っている。

昨季までの正守護神、ドゥーブラフカの戦列復帰は数週間後と報じられており、彼が戻ってくれば、多くのファンが毎試合スタメン発表に注目することになるだろう。それまでは、ひとまず、ダーロウの美しいセーブを存分に堪能させてもらおうじゃないか。

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