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肺がんPD-1/PD-L1抗体治療後のPembro継続は予後を改善するか?

Clin Cancer Res. 2022;28:2321-2328.

読もうと思っていて積ん読になってた論文にようやく着手。
ICI投与後の化学療法のresponseが良好という結果がRetroで報告されて、その理由としてICIの半減期が長いため一時的に後治療と併用状態になっているのではという仮説があったが、そんならBeyond PDで実際併用すればいいんじゃね?というのをやってみたのが本報告。いやあ、その通り。

本研究はランダム化第二相試験で、対象はEGFR, ALK変異のない進行NSCLC患者。直近6週以内にPD-1/PD-L1抗体単剤投与の既往があること。PD-1/PD-L1抗体の前のラインで1~2剤の細胞障害性抗がん剤投与歴があり、それにプラチナ併用療法を含むことが主なcriteria。

患者をPembro+chemo (試験群) vs Placebo + chemo (対照群)に割付。
前治療PD-1/PD-L1の効果 (PR or 6か月以上の病勢制御 vs PD or 6か月未満の病勢制御)および組織型 (adeno vs non-adeno)で層別化。chemoはGEM, PEM, VNR, DTXのいずれかから担当医判断で選択可。Primary endpointはPFS, SecondaryはORR, OS, 安全性。

統計学的設定。対照群のmedian PFS 4.2m, 6m PFS 28%と仮定し、試験群をmPFS 5.6m, 6m PFS 48%と設定。(HR 0.58) 集積期間2年, follow up 半年, 検出力 80%, 片側α 5%とし、必要症例数は92例。

結果

2018-2020まで合計98例の患者を割付。試験群 47例, 対照群 51例。年齢中央値 64歳, PS=1が95%以上, Never smoker 13%, PD-L1 TPS≥50%が53%。前治療ICIはPembroが60%, 前治療効果良好が約40%, 治療line数 1が70-80%, 併用レジメンはDTX 64例, GEM 26例, PEM 7例, VNR 1例であった。
mPFSは試験群 4.1m vs 対照群 5.9m (HR 1.06, 95%CI 0.69-1.62), mOSは各々 11.5m vs 12.0mであった。ORRは30% vs 33%であった。

サブグループ解析では、前PD-1/PD-L1治療効果が良好な群, PD-L1 TPS≥50%の群ではPFS, OSが良好な傾向にあった (特にKaplan-Meier曲線では9か月後から試験群がやや良好な経過を示しているように見えた)。その他のPD-L1発現群、組織型、前治療の種類(Nivo or Pembro or Atezo)別では明らかな差はなかった。重篤なAEの発現で差はなかった。

全患者のPFS, OS
PD-L1 TPS≥50%患者におけるPFS, OS

今回の報告では適格患者が「前治療でICI単剤を受けた」としか書いておらず、PD中止となったかまでは記載がない点が少し気になったが、恐らく論文のレベル的には大丈夫だろう(と考えている)。

結果的に有意差はなかったが、私も筆者らのdiscussionの通り「有効なpopulationがある」という点には賛成。baseの考え方で言えばICI中止後も1か月間程度は体内に薬剤が残っているということなので、対照群も1か月は併用していることになる。そのため本試験の設定では有意差がつかないのも無理はない。Kaplan-Meierが後半開いているという点は打ち切りも多く解釈が難しいが、forrest plotも何となくPD-L1高発現になるにつれてBeyond PD良好な傾向がうかがえ、swimmer plotでも一部durable responseを示している症例がある。

両群のORRはともに30%程度で良好なのは既報からも再現性のある結果。2nd lineだけじゃなくてずっとBeyond PDしたらどうなるかとか、見てみたいが、まああまり現実的じゃないか。discussionにあった通り、本データはICI単独後の成績なので併用がmainの現状にはすぐに適用できないものの、示唆に富んだデータで非常に勉強になった。本研究でも基礎的な解析があればなお良かったかな。

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