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早稲田卒ニート27日目〜路地の魅力〜
「路地で子供の隠れん坊遊びを見掛けなくなってから既に時久しい」から、藤田省三の「隠れん坊の精神史」は始まる。冒頭でいきなり躓かなくてはならない。あくまで「路地」であって、「道路」ではないのである。が、ここでは確かに「路地」でなくてはならない。「道路」ではいけないのである。
「路地」というと例えば「路地裏」という言葉への繋がりが生まれ、そして「裏」といえば「隠れる」場所という心象に結び付く。「路地」では隠れん坊が出来ても、まさか「道路」で隠れん坊しようなどと思う子供はあるまい。そこは車がビュンビュン駆け抜けて行くための領域だ。やはり、冒頭の言葉使いは「路地」である必要がある。
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何か売って金になるものはないかと家を探り見繕い、買取店へ足を伸ばす。ろくに値の付く品ではなかったので、気を落としつつ街を歩いていた。浪人生まで過ごした仙台の街は、出不精であった私には見たことのない景色ばかりである。ほとんど駅の方には出歩かなかった。「こんな店があるんだなあ」とキョロキョロしながらウロウロ。すると、賑やかなメインストリートの傍に突如、不安な空気の漂いを察する。路地である。
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路地はつい立ち止まってしまう。それに、このガチャガチャが気になって仕方がない。近づいてみる。すると今度は上の置物に目を引かれる。
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仮面ライダー、サッカー選手、野球選手、プロレスラーなど。もう少し近づいてみる。
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これは、仮面ライダーアギト(真ん中)、仮面ライダークウガ(右側)、仮面ライダークウガ・タイタンフォーム(左側)ではないか!幼少期の重要な記憶である。
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こちらは、アギトのシャイニングフォームである。バーニングフォームに変身してから、太陽の光を浴びると、そのエネルギーで外殻が割れ落ちてシャイニングフォームになるのである。
昔の仮面ライダーはカッコいい。無駄がなく洗練されているし、そこに意匠がある。
幼稚園の頃は毎月1回、誕生月の園児がみんなの前で自己紹介と将来の夢を披露する機会があった。女の子は口を揃えて、「ケーキ屋さんになりたい」とか「パン屋さんになりたい」とかばかり言っているのを聞いて、「どうして幼稚園児の段階でそんなものになりたいと思うのか?」と意味がわからなかった。わずか4年ほどの人生の中で、そんなにみんなケーキ屋さんやパン屋さんの影響を受ける機会があったのだろうか。「ねえ◯◯ちゃんは、なんでケーキ屋さんになりたいの?」と問い質したこともあった。飽く迄純粋な疑問である。
そんな中、私は自分の誕生月の会で堂々と、「将来は仮面ライダーになりたいです」と白状した。すると、である。体育館に集まっている園児がみな、大爆笑したのである。それも悪意ある、人を蔑む笑いに感じられた。恐らく彼らは、「仮面ライダーなんて、本当にいると思ってるの?」とでも思っていたのだろう。
そんな笑った連中は、「将来はパパみたいな人になりたい」だとか、どうせ思ってもいない、親からそう言うように刷り込まれたのだろう発言をしていた。こちらは鼻で笑ってやるべきだ。
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懐かしい顔のサッカー選手もいる。
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小学生の頃やっていたウイイレを思い出す。
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「路地」とは別に道幅何メートル以上以下だとかいう定義を必要とするのではない。客観的規定ではなく、路地には路地の、「路地っぽさ」という印象さえあればそれで充分だ。何か過去の記憶を引き起こしてくれる。
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店内にいる人たちは全員なぜか英語が喋れる。
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半年ほど前、約53年の歴史に幕を下ろしたそうだ。
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確か日本最古の居酒屋とかいったかな。
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初めは扉を開けるのに躊躇した。
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レレレのおじさんのライターが売っていた。
どこ行ったかな、あのライター。
どうも路地にはいい店が隠れているようだ。それゆえ常連だけが知っているみたいなことになったりする。そんな店を見つけ出す楽しみ。それを覚えると人生は面白くなる。みんな、大人になったら今度は隠れん坊のオニになろう。
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