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適応障害について

【要約】
 適応障害とは、ストレス精神疲労が原因の病気です。うつ病との違いについて、うつ病は原因不明の脳病だと考えられているのに対し、適応障害の場合は、明確な落ち込みの原因があり、その結果引き起こされた病気だと定義されています。見分けるのは困難で、治療中に診断が変わることもよくあります。
 気分の落ち込み、集中力や体力の低下、眠れない、食べれない、死にたい気持ちになる、などの症状があります。
 休養およびストレス原因の解決によって症状が改善し、薬は必須ではありません。働きながら回復を目指す方もいますが、休職して療養することが多く、3ヶ月で復帰する人が30%、6ヶ月で復帰する人が30%、1年半で復帰する人が15%、というのが目安です。(15%ぐらいの人が1年半までに退職)
 健康保険に加入されている(国民健康保険ではない)方は、保険組合から傷病手当金として給与の3分の2が支給されます。

周囲の人の対応方法

いつもと違う様子に気づこう
本人は周囲に心配をかけたくないため、症状を隠す方が多いです。
自分でも気づいていない人も多くいます。
そのため、周りの人が先に気づいてあげることがとても重要です。

話を聴く
否定をせず、励ましたり、アドバイスをせず、ただ話を聞くことが重要です。相手は病人なので、いつもと違った対応(というと大げさですが)が必要と割り切り、話を聞いてあげてください。

相談する
会社の産業医や相談窓口、上司に相談するよう、促してあげましょう。
病状によっては家族が代わりに相談されることもあります。
精神科受診にハードルを感じるのであれば、行政が設置している無料の相談窓口(こころの耳)を利用するのも良いです。

長時間労働のおそれがある場合、パワハラ・セクハラがある場合
月の残業時間が80時間を超えている場合、事業者は医師による面接指導を行わなければなりません。
またパワハラ・セクハラが疑われる場合、弁護士に相談するケースもあるかと思われます。
精神科主治医に相談するか、行政が設置している無料の相談窓口(こころの耳)を利用するのも良いです。

精神科の受診を勧めてみましょう
タイミングを見計らい、精神科受診を勧めてください。

話を聞きすぎない
周囲の人のほうが怒ったり、悲しんだりしてしまい、本人を助けるつもりが、かえってプレッシャーになってしまうこともあります。
周囲の人こそ、冷静になり、本人の気持ちに寄り添いましょう。

励まさない
励まされることがプレッシャーになることもあります。
相手は病人なので、いつもと違った対応(というと大げさですが)が必要と割り切り、応援したい気持ちを抑え、励ますタイミングを待ちましょう。

無理に特別なことはしない
気分転換に旅行などに誘う方もいますが、普段と違う行動はかえって、精神疲労を蓄積させ、病状を悪化させてしまうことがあります。
脳が休めるよう、できるだけ刺激が少ない環境を整えることが重要です。

大きな決断は先延ばしに

自殺のサインは?
基本は、いつもと違う言動に気がつくこと
予測はとても難しく、一番状態が悪い時に事故が起きるわけではない。
悪くなっている最中よりも、ちょっと良くなり始めた段階が一番危険なので、注意してみてください。

よくある質問


Q、どれぐらいの割合で適応障害の人はいるか?
 うつ病や不安障害などとの鑑別が難しく、疫学調査でも実態が反映されているとは考えにくいです。うつ病の傷害有病率が5~10%といわれている中、その中には適応障害も混ざっているのではないか、と考えます。
 個人の意見としては、2~6%ぐらいではないか、と考えます。

Q、「適応障害」になりやすい人はいるのか?
A、います。本人の能力を超えて、周囲から援助を受けられず、過度な仕事量を求められた時に精神疲労が起こり、適応障害となります。
 なので
本人の能力の問題:求められる能力に達していない、柔軟な発想をとることが苦手(真面目すぎる)、コミニケーションを取るのが苦手(助けてと言えない、抱え込む)…
 という人は、適応障害になりやすいです。
 また、コミニケーションをとることが苦手な人の中には、性格の問題というだけではなく、虐待やDVの問題が隠れていたり、発達障害があったり、アルコール依存や薬物依存など人には言えない問題を抱えている人もいます。

周囲から援助を受けられない:皆が忙しい、新人研修をしていない、逆にパワハラなどで本人を追い込む…など
過度な仕事量:忙しい職場、責任ある立場…など

Q、症状に無自覚な人も多い?
A、精神的に追い詰められていると、自分の状況に無頓着になり、症状に無自覚になってしまう人のほうが多いです。

Q、なんでもかんでも「適応障害」のせいにするのはおかしくないか?
A、適応障害とは原因ではなく、結果です。ストレスや精神疲労によって、心身に異常が出ている現象を「適応障害」という病名をつけているのであり、適応障害の結果として心身に異常がでているわけではありません。
 うつ病であれば、脳の不具合から生じる病気を指すため、原因にはなりえます。
 しかし、非難すべきなのは本人をそこまで追い込んだ、働き方や周囲の人たちに向けられるべきです。

参考文献


長期の病気のリストに載っている従業員の間の診断特有の職場復帰、辞任、および死亡の累積発生率:労働衛生研究に関する日本疫学協力からの発見。
千尋西浦ら
(2021/5/27)

こころの耳、ご家族にできること https://kokoro.mhlw.go.jp/families/ (2021/5/21)

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