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【部員紹介】4年AS小野寺響平「想い」後編

学生日本一になる。そう決めた今年、並々ならぬ覚悟で望んだ者がいます。作戦と戦術理解でチームに貢献するーAS小野寺の決意は、どのように生まれたのでしょうか。前編と後編、二回に分けてお伝えしています。
前編はこちらから。


4年AS小野寺響平「想い」《後編》

2章~懐疑と結果~

▽▲シーズンプラン
 今まで触れてこなかったのだが、学年が1つ上の先輩は1人しかおらず、その方はディフェンスASだったため、3年生になったと同時にオフェンスASのトップとなった。新しいシーズンを迎えるに当たってまず取り掛かったのは甲子園の反省と、それを踏まえたシーズンのプランニングであった。

関西のチームに勝つには何が足りないのか?学生同士で話し合い、勝つ為には「甲子園ボウル直前ではなく、春から難しい作戦に取り組み精度を上げ切る」という事だった。そんな意見をバッサリと切り捨てたのは坂本OC(Offense Coordinatorの事で、オフェンスのトップのコーチ)であった。

関学には日本トップクラスのコーチ陣がいる。戦略ではなく、日本一の選手を育てて、その選手の個の力で勝つ方が実は現実的なのではないか。この考えを基に簡単で誰でもできる作戦を誰にもまねできないレベルにしようという結論になった。これに伴い、自分の仕事も今までは有意なスカウティングをすることから、いかに選手が成長する紙芝居を書くかというところに軸がシフトした。


▽▲疑問の解決
 春シーズンのオフェンスは非常に不安定だった。早慶戦、立命館戦ではオフェンスがある程度機能したが、立教戦、駒澤大学戦では苦戦し、関大戦と明治戦は力を出しきれず敗れるという結果になった。

苦戦した試合には共通点がある。それは坂本OCの意図が学生に伝わらなかった事である。坂本OCのプレーコールが試合の流れに合っていない場合などがありその理由も学生、特に選手には伝えられていなかった。坂本OCの考えと、オフェンス幹部の考えがそもそも交わらない。戦略の幅も狭めている状態で果たして秋シーズン勝てるのだろうかという不安があった。

そんな心配をかき消したのも坂本OCであった。オフェンス幹部と坂本OCのMTGで、春シーズンの総括をしたとき、「選手がこの春は成長した。秋は自信を持って戦える。」と坂本OCが勝負師の顔で言った。
 つまり、春シーズンの坂本OCは目の前の1試合に勝つ為でなく、甲子園で勝つ為に選手を成長させることにフォーカスしていたのだ。坂本OCの自信が学生に伝わったのか、自信を持って合宿、そしてリベンジの秋シーズンを迎えることとなった。

小野寺と坂本さん

小野寺と坂本OC

▽▲開花
 秋シーズンのオフェンスは安定的に得点を重ねられるチーム、ドライブを常に継続できるユニットに生まれ変わっていた。自分自身も、春に少ない手札で戦った経験が生き、1試合を通したディフェンスのコントロールについてわかるようになっていた。ランプレーは最低でも4ydはゲインを重ねることができ、選手の個の力、個と個の連携の精度の高まりを感じた。パスユニットも関東リーグ1位の記録を出し、印象でも数字でもアンストッパブルなオフェンスに成長した。

坂本OCが春に蒔いた種が11月の終わりに開花し、1年前とはまた違った充実感を胸に甲子園ボウルに向かう事となった。


▽▲リベンジマッチ
 甲子園ボウルは1年前と同じカード、早稲田vs関学。もう同じ過ちは繰り返さない。自分がすべきことは一つ、選手の力を最大限に発揮するためのゲームプランを組んで臨む事だ。ただ、今回は去年とまた違った不安もあった。それは、「関学の選手に個で勝てているのだろうか?」という事だ。

関東リーグは対戦校の試合を直接見れたこともあり、選手の力量差を掴むことができた。しかし、ビデオでしか見れない関学は、いざ試合が始まってみないとわからない部分が多かった。頭の中で何十通りというイメージを想像して、試合を迎えた。

おのでらくん

2019甲子園ボウル 試合前ブルペンにて

 今までのアメフト人生で最もゲームプラン通りに試合が進んだ。第3Qの終わりには28点目を奪い逆転。絶対に、勝てる。そう思った矢先に逆転され、早稲田の再々逆転への望みをつなぐドライブ、もう手札は残っていなかった。

敵陣まで進んだものの4th Down Gamble、QBから放たれたボールは無情にもWRの手には収まらなかった。勝つチャンスはあった。ただ、負けた。試合後の先輩の表情はすべてを出し尽くした顔だった。もちろん負けは断じて許されない。しかし、昨年はそれさえも許してもらえなかった。引退する先輩からは声をかけられた。「来年は勝てる。その道はできてる。」


▽▲反省
 帰りの新幹線も、試合をもう1回見返しても自分は心にもやがかかっていた。果たしてチームは成長したのか。もし、もう1回試合をしたら甲子園ボウルは勝てたのか。自分の答えは否だった。あんなに理想的な試合はもうできない。10回試合して1回勝てるくらいだろう。その1回のチャンスを逃したという気持ちが大きかった。

来年こそ必ず。ラストシーズン、甲子園で400yd 40得点を取れるオフェンスで学生日本一になる。



エピローグ~ASで勝つチームに~

 今年AS主任に就任した。家が練習場所から1時間半かかる不便さは引退するまで文句を言い続けるが、主任だからと言って何か大変になった事はない。最近は新型コロナウィルスの影響で練習もできず、秋シーズンができることを祈る毎日である。ASのやりがいや楽しさ、辛さは今までの話を読んでいただいていればなんとなくわかって頂けると思う。だから最後に今シーズンの意気込みを記したい。

 ASで勝つチームに。実は入部したときから立てていた目標であった。自分以外に同期が4人いるのだが、ありえないほど迷惑をかけてきた。AS主任としてできるせめてもの恩返しがこの目標を達成することだと勝手に信じている。今自分にできることをやり切って必ず日本一を達成したい。

 200人いるチームの1部員、1スタッフの想い、熱さが読者の皆様に伝わっていれば嬉しいです。御精読ありがとうございました。

おのでら



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