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直感で物事を判断することは正しいのか?

直感で物事を判断することは間違っているのか?

先日職場で部下と会話をしている際に、ぽんすけさんって左脳で考えてますよね?と言われました。いま社内プロジェクトのリーダーを努めているのですが、リーダーという立場上意思決定には責任が伴うし、各所への説明責任もあるためなんとなくで進めることはありません。自分自身の考えをまとめるときはもちろん、部下の提案に対しても根拠となるデータやロジックを求めることが多いです。そういった姿勢が左脳で考えていると捉えられたのだと思います。
私が出す結論が彼の直感と反する時、彼は立ち止まります。私の結論を持ち帰って検討したあとで「やはり自分の直感の方が正しいと思います。なぜならば…」といって、彼の直感を説明するためのデータを追加して再提案してきます。その提案に対して、私は最初と同じデータやロジックを元に否定をして再検討してもらいます。
構図だけ見ると、彼が直感で出した案を私がデータやロジックを使って否定しているようになってしまっています。直感で判断することが間違っている、ちゃんとデータやロジックを使えとなってしまいそうですが、そうではありません。なんなら私自身も直感で判断することが多いです。すなわち、直感で判断することを否定しているわけではありません。
では、私が直感で判断することはどこが間違っているのでしょう?
自分の中で整理するためにもここで言語化します。

直感はノイズが混じるし、自分にしか理解できない

直感を辞書で引くと、「推理・考察など論理的思考によらず、自然に生じる思考や感覚で物事の真相を瞬時に感じ取ること」といった意味が書かれています。”自然に生じる思考や感覚”とは全員に共通で備わっているものではなく、実際には個人の経験や学習をもとに時間をかけて培われます。つまり直感での判断には自分の経験に基づくノイズが入るため、経験したことがない状況の判断は誤る可能性があります。
ノイズは自分に意識できないレベルで起こっています。学校の暗記や計算問題のようにいつ誰がやっても必ず同じ答えにたどり着くものであれば何回経験しても100%同じ答えになりますが、日常生活での判断でまったく同じ経験をすることは基本的にありません。仮に昨日と同じことが起きて判断をするとしても、昨日の経験や自分自身の体調、天気・気温、目に入るものの配置が違っているなど、意識しないような些細なことでも差分があります。これらが「今日は昨日と違うことをしたいな」というノイズになる可能性は十分にありえます。また直感で判断した時の理由は経験に基づいたものであるため、仮に正しかったとしても理由を他の人に説明できるようなものではなく、自分にしかわかりません。
直感で結論を出してみた時、その時点で結論は「ノイズが混じっており、自分にしか理解できない」状態です。
自分のことに関する結論であればそれで問題ありません。しかしプロジェクトといった会社の利益を追求するときに、「自分にしか理解できない」状態で突き進んだとすると問題が起こります。周りの人はそれぞれ自分の経験に基づく直感で判断するため出す結論が人によって違うし、理由も説明できないので「根拠はないけど自分のほうが正しい」としか言えない人たちの集団になってしまいます。周りの人に理解してもらうためにも、直感を説明できるだけの材料は必要でしょう。仮に直感が間違っていたとしても理由があれば周りと良し悪しの議論をすることができます。
そこで私と部下との違いを考察してみると、直感で判断したあとの工程に違いがありそうでした

直感に自身を持つためのテクニック

私はものごとを直感で判断をした時、「そうではなかった可能性」を考えるクセがついていました。ロジカル・シンキングと呼ばれる、自分の思考からヌケモレをなくすための方法です。直感で出した結論が成り立つ前提の条件をいくつか考え、その前提が成り立つかを検証し、成り立たない場合のケースを考えられていなかったとしたら考えてみる、といった流れでやることが多いです。
具体的に考えてみましょう。以下は、実際の状況をだいぶ簡略化したものです。
ある商品AとBを2ヶ月間販売し、2ヶ月目の売上を1ヶ月目と比較します。Aは売れ筋商品として取り扱っています。

  • Aの売上は下がっている。

  • Bの売上は上がっている。

部下は「売れ筋である商品Aの売上を回復させたい、Aの売上を回復させたらBの売上は必然的に下がります」と言ってきました。
直感ではBの売上が下がってもおかしくなさそうです。しかしこの結論を正とするための前提を考えてみます。AとBを見た時の行動パターンは以下のとおりです。

  • AもBも購入しない

  • AかBのどちらかを購入する

  • AもBも購入する

直感が正しいとすると「AかBのどちらかを購入する」お客様が大半であることを前提としていそうです。しかし、お客様によって事情はことなります。「AもBも購入しない」かつ「Bのみを購入する」が同時に増えた場合でも「Aの売上が下がり、Bの売上が上がる」という結果になります。この場合はそもそもAの売上が回復するのか、回復した時にBの売上が下がるのか、はそれぞれ怪しそうです。したがって、直感が正しいと判断するためには「AかBのどちらかを購入する」お客様が大半である = そうではないお客様が少ない、といったところまでは調査をしてみようと思い至ります。
めんどくさいことをしているようにも見えますが、あえて言語化しているだけで実際には簡単なものは頭の中でサッとやりますし、若干複雑だなと思ったらノートを開き、縦軸は「Aを購入する/しない」横軸は「Bを購入する/しない」といった表を書いて、それぞれの行動を起こすお客様がどんな人なのかを検証するだけです。それこそ、慣れれば直感で選択肢まで頭に浮かびます。

大切なことは、最初の直感では気づかなかった選択肢を検討すること

実際には直感を結論とすることも多いです。直感で判断することが正しくない、ということを言いたいわけではありません。直感はものごとを瞬時に判断することができます。日々判断しなければならないことは非常に多く、全てに対して先程の例のような検証をしているわけではありません。あくまで慎重に判断した方が良い場面、例えば多人数が関わるような大きなプロジェクトではそうした方がいいだろうという話です。
重要なのは「最初の直感では気づかなかった選択肢を検討した」という点です。最終的な結論が直感と違うものだったとしたら直感以上の考えにたどり着けてよかったとなりますし、逆に直感と同じになったとしてもその結論自信を持つことができます。「直感が正しいのか?」と考えてしまうと直感が正しいというデータのみを集めてしまうため、他の選択肢があることにすら気づかないこともよくあります。

直感で判断することは間違っていない。ただし、直感を信じすぎてはいけない。

直感はものごとを瞬時に判断することができ、非常に便利です。私も直感で判断することは多いです。しかし直感は性質的に間違える可能性を孕んでいます。プロジェクトでの意思決定など、より大きく多人数が関わる問題については直感だけで判断することは避けたほうがいいでしょう。
直感で判断することは間違っていない。ただし直感で出した結論を含む選択肢を出して比較するべきだ。なぜならば直感はノイズが混じるし、自分にしか理解できないからだ。

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