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『静と弁慶』読みました?

読んだ?

あ〜、よかった。しみじみと、いい漫画読んだな〜、ってなる、名作映画を観た後みたいな、満たされた読後感があって、よかったですね。

こういう、マイナースポーツを題材にした漫画って、説明的になりやすいというか、むしろ「うんちく漫画」的な部分を楽しむ作品が多いと思うんですよね。

そういう「うんちく漫画」も好きなんですけど、どうしても風情が無くなってしまうというか、解説キャラとかナレーションが出てくると作品の世界から一歩引いてしまう部分があるじゃないですか。そこをこの漫画では、競技の最低限のルールも、保護者同士の会話の雰囲気とか会場の空気感も、言葉に頼らずに表現して、武道経験者以外にも伝わるように説明していて、すごく漫画が上手だな、と思いました。

序盤から、保護者の台詞の節々から、“男の子”が薙刀をやることに対する、奇異の目というか違和感みたいなものが出ていたり、「演技」の決勝戦の噛み合わない気まずさだったり、ほとんど弁慶と静の会話らしいやり取りがなかったり、そういう細かい描写や緊張感の積み重ねが、終盤の静の手紙のモノローグで、静がそれまで表に出せずにいた感情に一気に接続されて、しっかり泣いてしまった…。

異性との距離感とか、それを意識させられてしまう環境とか、思春期に第二次性徴を間近で見ることに複雑な感情を抱きながらも、弁慶の性差を意識させない振る舞いに救われる部分もあって、でもそれと同時に、関係性がいつか終わることへの悲しみも感じてしまって、そういう、友情でも愛情でもない、静だけの感情がぼくの中にも流れ込んで来たという感覚があって、そこがなんか、たまらなく愛おしくなってしまいましたね。

これまでずっと「がんばろう」だったのが、「がんばってな」になってしまったけど、最後には2人で「がんばろう」と交わし合うことができて、本当によかったね…。

岩村くんと弁慶の会話のシーンもいいですよね。この漫画の中でも特にコマ割りが単調で、構図もほとんど変わらないんだけど、台詞量とか吹き出しの大きさとかで、テンポの強弱にグッと引き込まれてしまうところも上手いと思いました。

この作者さんの他の漫画も気になったので調べると、前作も薙刀の漫画を描いていたので、試し読みをしてみました。

絵もキャラクターも雰囲気も全然違うじゃん!全然違うけど、男子が薙刀をやることがテーマになっている点は共通しているのか…。面白そうなので単行本を買ってみます!

面白かったらまた感想を書きますので、その際はよろしくお願いします!それでは!

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