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「幸せを広げる」ということ。

マーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険』は有名な小説ですが、その中に『ごきげんなペンキ塗り』という話があります。

主人公トムは、罰として壁にペンキを塗る仕事を命じられます。はじめは嫌々やっていたのですが、途中でトムはひらめきます。口笛を吹きながら楽しそうに仕事をやりはじめたのです。すると友人が寄ってきて、そんなに楽しいのなら俺にもやらせてくれとお願いしてきます。わざとトムが断ると、「お願いだ、リンゴをあげるからどうしても代わってくれ!」と懇願され、最後にはペンキ塗りをしたいという友人が次々とやってきて、塀は見事一日で塗り終わり、さらにたくさんの物品まで手に入れた、という話です。

社内ミーティングの最中、ときどきこの話を思い出します。はじめは自分でも「なんで?」と思いましたが、すぐにわかりました。

お客さまの話をするスタッフが楽しそうなんです。もちろん「おもしろい話」をしているわけではなく、日々の報告や課題共有など、いたってふつうの話です。むしろ大変だったエピソードなんかもあります。でも、なんだか楽しそうなんです。

ぼくはお会いしたこのないお客様の話を聞くことが多く、それも現場に行ったことのある人しかわからないような話がほとんどです。ふつうに考えれば、退屈してもおかしくありません。ところが、そうでもないのです。その方のことをもっと知りたくなったり、お会いしてみたくなったりすることがあるんです。これって地味にすごいと思うんですよね。

話が上手とか、内容の良し悪しとか、そういうことではなく、語り口から伝わってくる相手への尊敬や親しみが、聞く人たちの心を躍らせたり温めていくわけです。ウォームハートの理念にある「幸せを広げる」って、こういうことなんだなぁ、と。

それに、もし自分がご利用者さんの立場だったとしたら、そのご家族の立場だったとしたら、きっとうれしい。いや、たぶん間違いなくうれしい。自分のいないところで、こんなふうに考えて、あんなふうに語ってくれていたら、僕だったらうれしい。こういう身内話って、いかにもといった感じがすると思うんですが、これ本当なんですよ。


主人公トムのように大変なことや辛かったことでも楽しそうに語ってくれる人、日々たんたんとやってくれている人、その中間でバランスをとってくれている人、こういう仲間がいることがありがたいなぁとつくづく思います。単純に自分も頑張ろうって思えるんですよね。

へんな言い方ですけど、そんなチームにいると「失敗してもしょうがないか」と思えたりするんです。成功を約束し合うよりも、失敗した時に「俺たち失敗したね」って言い合えたら、それは強いですよね。

(小林)


【今月の一言】
バランスをとるのが判断。バランスを崩すのが決断。
判断で物事は止まって、決断で物事は動き出す。 
(ビジネスデザイナー 濱口秀司)

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