すりぬけゆかだんぼう

思ったこと感じたことを文に起こしています。気に入って頂ければ幸いです。

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最近の記事

飽きた その一言でたくさんのモノを捨ててきた。 ハマっていたおもちゃ、お気に入りの本、好きな曲、仕事、友人、恋人、家族… もし境界線がなければ、私はもうこの世には居ないだろう。 思いついたように簡単に安直に 飽きた そういって死を選んだだろう。 何かを生み出すでもなく、自分のことすらおぼつかず、無為な時間をのうのうと過ごす自分は酷く滑稽だ。 この意味のない思考に、睡眠時間は吸われ、歯車は狂いだす。 悲しい時には涙を流し、他人を頼り、馬鹿みたいに垂れ流すことが

    • 視界

      0.01の世界を生きる僕にとって、眼鏡という物は自分にとって必要不可欠なものだ。 「見えない」 この事実は、どうしようもなく不便を突きつけてくる。全てを1ミリの狂いもなく正確に見えることこそが便利であり、必要なことだと。 けれど、最近になって見えないことのありがたさを知った。 自分の中に形をつくり、答え合わせをしていくように 容姿を知って、声を知って、仕草を知って、好みを知って、考え方を知って 後に残るのは、これからの僅かな可能性 それに興味を抱けるほど暇でもな

      • 嫉妬

        なんで?どうして?なぜ? 答えの分かりきった問いはぐるぐると頭の中を回り続ける。君にこの感情を知られるのは、筋違いだし第ー知られたくもない。理解されたくもない。 人に好かれ好いている君が好きだ。尊敬もしている。けど、知らない異性の話がでれば、面白くはないさ。それが例え社交辞令の飲み会だとしても、飲食を共にしているなんて嫌に決まってる。見ず知らずのやつにむき出しにすることは当然容易いことだ。自分が知っていて、それも君にそこまでの好意がないことを理解している人間なら、どうだろ

        • 紫煙

          飲み終わったチューハイの缶を片手に、ベランダに出る。風は丁度いいくらいにそよいでいて、この時期にしては珍しく湿度の鬱陶しさもなりを潜めている。 どこで買ったかもわからない安物のライターを手で囲って、火をつける。吸って、吐いて。白い煙がゆれる。 吸い始めたのは、いつだったかな… そんなことを考えながら、また吸って吐く。 友人のように好きなわけでもない、むしろ嫌いだ。口の中の気持ち悪さ、指に残る特有の匂い、服にしみつく煙。けれど、自分にはどうしようもなく必要なものだと。作

          一樹

          学校終わりに暇だから家の近くにあるスーパーに来ています。僕には、興味の尽きない人がそこにいるからです。1ヶ月前から酒コーナーのレジに立っている謎のかっこいいお兄ちゃんです。前までは、おばちゃんがやっていたのにいつの間にか変わっていました。お兄ちゃんは、うんと背が高くて、黒髪で、左耳にシルバーの指輪みたいなのがついています。いつもつまらなそうにレジに立っています。そして、今日こそはお兄ちゃんの名前を聞いてやろうと思うのです。僕は、お酒が並んでいる棚に隠れながらレジまで行って、聞

          prologue

          朝が来る。目が覚める。アラームが鳴る。朝ご飯を食べる。学校に行く。友人と話す。帰る。寝る。 いつものようにいつも通りの行動を繰り返し、日常を形作る。そこに多少の変化はあれど、誤差に過ぎず「いつも」に変化の兆しは見えない。 ふと深夜に見たアニメを思い出す。その物語の主人公は、当たり前のように認識を覆すようなものに出会う。能力に目覚める。恋をする。自分もそうであれば良かったなどと否定することは無い。けれど、どうしても隣の芝生は青く見えるもので。日常の中に、「いつも」の中に変化

          何者

          人は他人をどんなふうに思い出すんだろう、そんなことをふと思う。 まぁ大抵の場合、相手の容姿や服装、持ち物、感じた雰囲気から自分の中に相手を形作り、見たもの感じたものをそのまま再現するのではないだろうか。その作業は相手を思い出す上でとても重要なものだと思う。 なら、自分はどうだろうか 単なる好奇心で友人を「思い出す」 そこには化物がいた。 相手の特徴をこれでもかと言わんばかりに強調し、それ以外の凡庸なところは全て削りとられ、視覚で捉えたままの友人の姿はない。 次の友

          傲慢

          あなたの特別になりたかった。 その気持ちは嘘ではない。好きになって欲しいわけでもなく、ましてや嫌って欲しいわけでもない。ただあなたの特別になりたかった。 偽物ばかりのこの世界で私が探し求めていたものは、あなただと思った。やっと見つけたと思った。 それなのに。それなのに私の期待をあなたの好意はどうしようもないくらいに踏み潰す。その素直さに吐き気がする。やっぱりある訳が無いのだろう。求めたところで手に入るはずもなく、そのどうしようもない事実に虚しさを覚える。 本物なんてい

          自己欺瞞

          ああ……まただ 彼はいつも近況のことをとても楽しそうに話してくれる。私と話すことを楽しいと思ってくれるのはありがたいことだし、彼の好意も非常に嬉しい限りだ。彼はわかりやすい興味を示してくれている。 なら、私は? そう思った時には目から輝きはすでに失われている。彼は相も変わらず輝きに満ちた目をして話している。 「そっか」 「すごいね」 「それは良かった」 相槌を打つ私の目に輝きは戻らない。 つまらなかったかい?と、彼は申し訳なさそうな顔で私に聞く。 「そんなわ

          告白【裏】

          もう何度目だろうか… 最初は緊張もしたし、相手からの好意は嬉しかった。けど、いつからか気づいてしまった。 誰もぼく自身を見てくれてはいないんだなと。諦観し、応えられない罪悪感が体を蝕んでいる。この人は違うんじゃないかなんて期待はもうない。 僕はいつものように一言だけ告げる。彼女の感情はその行動を通して僕に伝わる。 僕は自分の顔が嫌いだ。いつも人に嫌われないことだけを考えてヘラヘラして笑顔を貼り付けたこの顔が。 僕は自分の性格が嫌いだ。相手の隙につけ込み、当たり障りの

          告白【表】

          「好きです、付き合ってください」 私が勇気を振り絞ってやっと言えた言葉に、彼は特に驚く様子もなく何故か悲しそうな表情を浮かべた。 「ごめん、君の気持ちには応えられない」 その一言は、私の高ぶった感情を溢れさせるには充分で、目からは涙が零れた。 彼の顔が好きだった。いつも元気をくれる、あのさわやかな笑顔が。 彼の性格が好きだった。困った時は助けてくれて、相談に乗ってくれるその優しさが。 別にかわいくもないし、性格も良くない私はやはり彼に釣り合わない。彼は私を何とも思って

          散歩

          月が綺麗だね 月を見ながらつい口に出してしまった言葉に思わず恥ずかしさを感じた。隣を歩いていた君はそれを察したかのように笑っている。 意図した訳ではなかった、本当にただそう思っただけなんだと言い訳をしながら頭をかく僕に、君は意地悪そうな笑みを浮かべて、月が綺麗ですね〜と繰り返す。 はいはいそうですね、なんて投げやりに返しながら君を見る。 ああ、本当に月が綺麗だ……

          夢現

          とても眠い。 起きた瞬間に思うことはいつもそれだ。漫画であと5分…なんて言葉を耳にするが、本当にその感情をよく言い表せているなとしみじみ思う。いま布団は数時間人肌によって温められ最高の心地よさを発揮している。そして今は、春だ。春眠暁を覚えず、とはよく言ったものだ。カーテンの隙間から陽光が優しく差し込み、けたたましいスズメの声が聞こえてくる。これほどまでに日常に浸るという表現が合うことはなかなかないだろう。ずっと振動している忌々しい××さえなければ。仮に××を手に取ってしまえ

          エゴ

          僕はさ「普通」になりたかったんだよ。特に大したことでもないのに喜んで、特に大したことでもないのに怒って、特に大したことでもないのに哀しんで、特に大したことでもないのに楽しんでさ。感情の起伏が乏しい僕からするとそれはとても素晴らしくて羨ましくて妬ましくて腹立たしい。どうしても欲しく欲しくて仕方がなかった。所詮は真似事に過ぎないものだけれど、やっと掴めそうだったんだ。やっと諦めることができそうだったんだ。やっと「普通」になれると。妥協によって成り立つはずだった僕にまた道が開かれる

          2時11分 気がつけば時間は既に丑三つ時に入っている。いつの間に寝てしまったのか…寝ぼけた頭でそんなことを考えながら乾いた喉を水道水で潤す。 特に何もした訳でもないのに疲れている自分に嫌悪感を抱きながらも、僕は横になった。友人たちの興味もない近況に目を通しながら、無意識のうちにため息がこぼれる。面倒だ…誰に向けたのかわからないその呟きは明かりのない部屋へと消えた。 好きなアーティストの曲を聞きながら、歌詞を眺める。目と耳で楽しめるなんて実に素晴らしい。ひとり酔いしれる僕に

          空を見ている。 鳥のように自由に飛び回りたいわけでも、飛行機雲に郷愁感を抱いているわけでもない。 ただただ空を見ている。 初めて自転車に乗れた時も喧嘩した時も卒業式の時も好きだったあの人に振られた時も、表情は違えど空だけはなにも変わらない。 僕は変わらずにいられているのだろうか。これからも変わらずにいられるのだろうか。このまま変われずに終わるのだろうか。 なんの生産性もなく意味の無い思考は、同じところをぐるぐると回るばかりだ。 突然の振動と共に携帯は一通のメールの受信を知ら