楽しい誹謗中傷――インプレッション分析から導く誹謗中傷仮説
ご注意
このnoteには誹謗中傷を推奨する意図はありません。
また、誹謗中傷する特定の誰かを罰したり否定する意図はありません。
はじめに
私は今2023年3月から続いているある個人アカウントに対する大規模誹謗中傷事件を追っています。私は毎日のように観察を続ける中で「この人たちはなぜ誹謗中傷するのか?」という疑問を持ちました。
気になって誹謗中傷についての研究を探してみましたが、見つかったものは私が知りたいことではなかったので自分で調べてみることにしました。
仮説①鬱憤晴らし
まずは誹謗中傷する人の特徴と動機について仮説を立ててみることにしました。
この仮説を立てたあと実際に誹謗中傷している人のSNSでの投稿を見てみることにしました。
仮説の破れ
仮説が正しければ彼らは陰鬱とした投稿しか行わないはずです。しかし実際には誹謗中傷している彼らは美味しそうな外食の写真をあげたり友人と外出する者もいるなど、とてもひきこもりと呼べるものではありませんでした。
仮説が破れた私はそれでも原因を見いだせないか、彼らの投稿を眺めていました。
発見
すると、彼らの誹謗中傷投稿と非誹謗中傷(以下、日常)投稿のインプレッションには明確な差があることに気付きました。そこで私は彼らの投稿のインプレッションを調べてみることにしました。
以下のデータは誹謗中傷を行っている3つのXアカウントの投稿をリスト化してインプレッションを抽出したものです。なお、インプレッションを見る投稿は他アカウントの影響を除くためにリポスト、リプライはカウントしていません。
アカウントA
このアカウントでは誹謗中傷投稿は日常投稿のおよそ3倍のインプレッションを稼いでいることになります。
アカウントB
このアカウントでは誹謗中傷投稿は日常投稿のおよそ2.5倍のインプレッションを稼いでいることになります。
アカウントC
このアカウントでは誹謗中傷投稿は日常投稿のおよそ5倍のインプレッションを稼いでいることになります。
仮説②誹謗中傷はゲーム?
この数字から導かれる仮説は、誹謗中傷投稿は投稿者にとってインプレッション稼ぎというゲームになっているのでは?ということです。
ゲームであれば攻撃性の高さを競うように投稿することに納得感があります。
以下の例はほぼ全ての誹謗中傷事件で見ることができる定型化された誹謗中傷のやりとりの一幕。
そして、ゲームであれば誹謗中傷は楽しいのでしょう。
インプレッション仮説を前提にした考察
この仮説は私達がゲームを辞めるのが難しいように、誹謗中傷でインプレッションを稼げる内は加害者が誹謗中傷をやめることが難しいことを示唆しています。
このことからSNSに跋扈する誹謗中傷を消滅させるには「誹謗中傷にインプレッションという報酬を与えないようにする」という対症療法以外にないということなのかもしれません。
なぜプラットフォームは誹謗中傷に対応できないのか?
そもそも何度も起こる誹謗中傷にプラットフォームはなぜ対応できないのでしょうか?
思い当たる理由の一つは対応コストです。誹謗中傷はハイコンテキスト化することもありアルゴリズムは複雑化し、機械的な対応は難しい。少数であればともかく膨大な数となるとプラットフォームの限界が先に来ることでしょう。
そして、一つは広告費です。インプレッションを稼ぐということは広告費を稼ぐことにつながるのでプラットフォームは利益を得ます。
つまり、構造的にプラットフォームは誹謗中傷を放置すればするほど利益を得ます。
このことはプラットフォームの対応の遅さを説明するには十分ではないでしょうか?
それでも私達にできる誹謗中傷対策
プラットフォームが硬直した中で被害者・部外者として私たちが加害者にインプレッションを与えないようにするためにできることは以下の通りです。
例え部外者であっても義憤に駆られて誹謗中傷に反応したくなってしまうことがあります。しかし、それはインプレッションを与えることにつながり誹謗中傷の動機を強化することに繋がります。
「誹謗中傷にインプレッションを与えない」
このことを徹底することが、SNSを健全に保つために重要なのだと思います。