完全着衣入浴

服を着て風呂に入るの、毎日入る風呂と毎日着る服というものの歪んだ掛け合わせで日常ほんのわずかでしかし決定的な逸脱という感じがいいですね。
被害は後片付けが大変なだけで深刻な破壊ではない、つまりそんなに悪いことはしていないというのも味噌。

芥見下々『呪術廻戦』

思っていたより 気持ちがいい

真面目で堅実な男日車寛見が「色々どうでもよくなってやってはいけないと思っていたことにチャレンジしている」一環で劇場の舞台でピンスポ浴びながらスーツでバスタブに浸かってる。
あまりにもよすぎますね、絵面だけでもかなり強いのに過去回で日車がだーい好きになってからの30半ばでグレたという背景、相当魅力的よ。
呪術は全力お洒落お洒落漫画ではないですが随所でセンスが光りますよね。
その後キレキレの戦闘してるんですが脳裏に「靴じゅっぽじゅっぽいってんのかな…」とよぎりますよね。風邪ひかないでね。
あと日車の戦闘描写で面白いの、能力のひとつが「大きさや(ある程度)形状が自由な槌を自在に出したり消したりできる」なんですが、一度右手で槌を振り下ろした後、即消して振り上げた左手に槌を出現させ振り下ろす、その間に右手を上げまた右手に槌を出現させる、の繰り返しで連撃を可能にしてるとこですね。発想に加え、少ないコマで上記を理解させテンポを損わないの技術ですよね。

宮崎夏次系『夕方までに帰るよ』
主人公の姉と姉に似た女性数人をアパートの各部屋に住まわせて所有している謎の男が、姉がユニットバスの浴槽に浸かってるときトイレの蓋にスーツ姿で座っていてそのまま姉のいる風呂に浸かり手で水鉄砲をかける。
妖しいし不穏だし性的で最悪ですね。あとあんまりセックスしてる感じもないのも逆に嫌だ。すごくグロテスクで好きなシーンです。

オノ・ナツメ『LA QUINTA CAMERA 〜5番目の部屋〜』
ルカが失恋して帰宅即シャワールームに直行して着衣で泣きながらシャワーを浴びるシーンがあります。
これはいっぱいいっぱいになった人の感じがいいですね。

basso『amato amaro』収録の双子の話、手元になくてタイトルがわからない…
双子の兄の結婚パーティに出席する弟とその同性の恋人の話。
浴槽に湯を張っている途中半ば事故的に2人で服のまま風呂に浸かり会話するシーンと切なく寄り添うラストが印象的です。日車みたく、滑稽さとともになげやりな人間の悲しさがあります。ふたりだからなお、2人ぼっちな感じがする。
ユーモアとペーソスの演出が大変効果的で好きな作品です。bassoの作品の同性愛者の同士感が愛おしくも苦しくて読むとたまらない気持ちになります。

全部漫画でしたね、実写のドラマや映画、MVでもありそう。小説だと絵が見せられない分、湯が服に染みる感じや服の重さが肝になりそう。

本人たちの辛さに比べ側から見れば奇妙で滑稽なのが味ですね。

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