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インゴ・スワン「リアル・ストーリー」(49)

「インゴ、あなたは多くのことについて洞察力に富んでいるけれど、他のことに関してはまったく未熟なところがあるわ。あなたは世界の仕組みを知らないのよ...」とビューエルは言った。

「ぼくにはよく分かっている」と私はさえぎった。

「超心理学でそのようなお金が関係する場合、そのお金は他人が自分の忌まわしい目的のために横取りすることになるのがオチだ。たとえあなたがぼくの雇用の継続のために資金を入れたとしても、そうはならない。 超心理学の世界ではそういう仕組みになっているんだ」

「オシス博士を見てごらん。彼はASPRのためにカールソンの資金を集めたけれど、彼は雇われた研究員のままで、ASPRの理事会に招待されることもなく、ASPRが許可することだけをしなければならないんだ」

「ASPR なんか相手にする必要はないわ。あなたは何か新しいやり方を確立する権利がある。あなたのアイデアには洞察力があって、革命的なのだから...」

「分かってないね。ぼくはただの被験者なんだよ。被験者は超心理学の世界では何者になることもできない。なぜなら彼らは自分の仕事やその他の仕事に関して公平ではないからだ。そうしたものが要求されるのは科学の世界だ。超能力者を認める超心理学者を一人でも挙げてみてよ」

「だったら超能力者が運営する新しい研究所を立ち上げてみたらどう?」

「何を言ってるんだ! 超能力者は超心理学者よりもずっと生き延びることは難しいんだよ。そもそも生き延びることができればの話だけど。そんなことを言われたって何をすればいいのか見当もつかないよ」

話は平行線だった。ついに、ビューエルは杖を手に取り、かつて司教か誰かが所有していた美しいクリスタルのグラスで飲み物を作ろうと苦しそうによろめいた。

「とにかく」とビューエルは言った。

「今は募金活動を中止することはできません。自分で考えて解決してください」

「ビューエル、」と私は答えた。

「もしこのことが漏れたら、ぼくは破滅的なことになる。君の提案はとても光栄だが、とても受け入れられない」

「このことを漏らさないと約束してほしい。これはアーティストが自分でギャラリーに入場し、自分の展覧会にお金を払うのと同じだ。そんなことをしたら、その後は誰も真剣に受け止めてくれなくなる。独立するためにはぼくが本物であることを証明しないといけない。ぼくはまだそのような存在ではないんだ」

「お金を持つことは力よ、インゴ」

「ちがう。力であるお金を誰がコントロールするかが重要なんだ。正式な実験がどうなるかが分かるまで待とう。たぶんそれまでにどうすればいいかの方法が示されるだろう」

結局私たちは仲直りの抱擁を交わした。 しかし彼女とはその後2週間電話で会話することもなかった。

私はウィンゲイツ夫妻、ベニット夫妻、キンゼル博士、そして最終的にはルシル・カーン夫人、そしてブロード夫妻と同じ議論を繰り返さなければならなかった。アル・ブロードは私を狂人だと思った。

本当に理解してくれたのはゼルダだけだった。
「お金があれば、他の人はそれを手に入れるために人を殺すでしょう」と彼女は言った。

そのような時代はもう終わったかもしれない。 しかし資金管理の問題は別だった。この後にも数年間、このことをめぐっては多くの激しい議論が行われることになった。

とはいっても、この募金活動は私のために行われた最も素晴らしい出来事の一つだった。どのように報いたらいいのか本当にわからなかったが、このような支援が示されたことで、私は大変力づけられたと感じたのも事実である。

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