しっぽ覚

これも幻肢痛のようなもの、と言っていいのだろうか。

夢の中で尻尾を捕まれたことがあるので(逮捕されたという意味でない)、尻尾を捕まれる感覚を知っている。

尾てい骨から繋がるその皮膚感覚は、先端に行くにつれて徐々に繊細になり、無神経に捕まれるとそこそこ痛い。無いうしろ足で相手を蹴りたくなる。


知っているのは確かなのだが、無いものの皮膚感覚だけ知っているというのはどうにも納得のいかない心持ちである。

例えていうなら、鼻で笑うときのあの「口を閉じて鼻から息を吐いて発声する音」が、表記ではせいぜい「ふんっ」という似て非なる音に置き換えて表記されるということの違和感に似ている。
(表題とは別の話になるが、日本語は発音に対して仮名の種類が少なすぎないだろうか?)


しっぽの話と近い話として(これは共感されたりされなかったりするのだが)、足の中指って、全然「中指感」がない。
足の親指が-2、人差し指が-1、中指が0、薬指が1、小指が2 とすると、さわった感覚としては、中指が1、 薬指が1.5、 小指はそのまま2 という感じだ。
感覚が0の位置にある指は何かというと、人差し指である。
(足の人指し指というと「足の指で人を指すな」という感じだが、話題がそれるので今は深く突っ込まない)

足の人指し指は真ん中感がすごい。さわった感じ、まちがいなく足の真ん中を通っている。
それなのに目で見ると五本のうちの二番目なので、神経の繋ぎ間違いじゃないのかと思う。

親指はちゃんと親指らしい感覚なので、そうなると足の人指し指らしい感覚を持つ指がない。
「無い」尻尾の尻尾らしい感覚は知っているのに、「有る」人指し指の人指し指らしい感覚を知らない。

もし世界のどこかに、尻尾に尻尾らしい感覚がないのに無いはずの足の人指し指の感覚がある生き物がいたら、そいつのしっぽと私の足の人指し指は、どこかでぶつかったことがあるのかもしれない。

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