身勝手観賞

小学校の校庭で私はそれを見上げている。


鯉のぼり。
鯉のぼりがつぶらな目でこちらをみている。
特段仲間になりたそうな感じではないが、二匹の鯉に黙って横目で見つめられると、何かしら訴えかけられているような気分だ。

ふと見ると、鯉と一緒にバタバタしているやつがもう一匹いる。
鯉は豪華だが、色だけで言えばそいつのほうがカラフルである。足が多く、鯉と言うよりはタコやイカに似ている。


そういえば、大きな真鯉はお父さんで、小さい緋鯉は子供たちらしい。
カラフルなそいつは、真鯉や緋鯉とさっぱり似ていない。血縁関係がない可能性が高い。

なぜあんなところで家族ヅラをして一緒に泳いでいるのだろう。
他鯉が家庭の上でバタバタやっているのを、お父さんもどうして放っておくのだろう。



おそらく、家庭教師である。

友人宅で幅をきかせていたあの女性は家庭教師であった。
我が家には家庭教師がいないが、親は教師という存在に対して気を使っているようだし、家庭にくる教師ともなればもっと丁寧に扱うだろう。
まあそんなこんなの理屈で、多分家庭教師というのは家長より偉いのだ。


それにしても、異形である。
学問を修めすぎるとああなるのだろうか。ああなるのは本鯉にとって嬉しいことなのか、それとも甘んじて受け入れた代償なのだろうか。


「個人的にはいいと思うよー」

一応そう声をかけておいた。
異形の家庭教師は相変わらずバタバタしていた。


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