なにがあったメシ~えのき編
はっ、ついぼんやりしていた。
ここはどこだ......台所か......?
アッ、炒めようとしたはずのえのきが......水に浸かっている......。なぜだ、これはいったい......。
そう、たしかイシヅキとかいうのを切り落としたはずだ。袋から出した後。
しかし袋から出す前に行うはずの押しほぐす行程が、全く記憶にない。一時的に記憶を失っているのだろうか。
白く美しいえのきとフライパンの黒のコントラスト......私はコンロの火もつけずに何を立ち尽くしていたのだろう。
だめだ、それについては何も思い出せない。
しかし、なぜ水をいれたのか徐々に思い出せてきた。
ほぐれていなかったからだ。
ほぐれていなかったから......当然のように水を......。
いやまて、やはり何かがおかしい。それは一体なんの脈絡だ。なぜ水なのだ。
わかった。ほぐすためには水、それは焼きそばの方程式だ。小学校で習った焼きそばの方程式。
すっかり忘れていた。
引っ越しで火力の小さいコンロになってからは水を入れるのをやめて先にレンジで温めるようになったので、焼きそばクッキングのルーティンにすら入れていなかったはずのその手順。
なぜ今なの?なぜ今さら戻ってきたのですか?
ここに......えのき炒めるーティンに、あなたの居場所はない......。
しかし私は働きたい水には仕事をやるというつまらない誓いを立てちまっているので、水を切ることはせず、えのきだけ鍋にして美味しくいただきました(だけ のダブルミーニングが美しいですね)。
ごちそうさまでした。
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