世界電話
今朝バス停から駅までだらだら歩いていたところ、後ろを歩いていた集団の中からこんな声が聞こえた。
「お前どんな世界観で電話取ってんだよ」
うわっ、気になるなあ。
前後文脈がなあ。気になるなあ。
それまでに断片的に聞こえていた会話から推察するに、アラサーくらいの会社員同士が会話しているようである。
言い方は呆れて鼻で笑う感じだったが、言われた方はやたらと大笑いしている。
笑っている場合ではない。あなたは一体どんな世界観で電話を取っていると言うのだ。
たまたま横にあった公衆電話に謎の存在から自分への電話がかかってくる世界観なら是非お邪魔したい。
しかし電話を取る時の世界観ってなんなんだ。電話応対の世界観なんて研修でも聞かなかったぞ。
文脈がわからないことには、発言者がツッコミを入れているのか、発言自体がボケなのかからして謎である。
言われて大笑いしていた方が、しばらくしてようやく笑いを納めると、
「でも僕が電話取るときと顔が似てるんですもん!」
と言った。
めっちゃ振り向きたい。
いや、今振り向いてももちろん電話応対中ではないし、見たって誰に似ているのかもわからないのだが、とりあえず一目見たい。
今はなにぶん狭い歩道に人がぞろぞろ歩いている。駅についたらさりげなく後ろを伺おう、と思っていたら、二人は途中で別の道に曲がっていってしまったようで、結局会話の続きを聞くことはなかった。
それから今日一日、ずっともやっとしている。
結局世界観ってなんだったんだろう。
あの人はなぜ、自分が電話を取る時の顔を知っていたんだろう。
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