そしてファンになる

取り急ぎ書き残しておかなければならないことができた。


映画の感想なんですけどね。

「そして父になる」は何回か見ているのだが、見るたびに何か書かなければと思う。そして毎回何か書く。
「そして父になる」に限らず是枝監督作品を見るとだいたいそうなる。

どの映画でも一度目はストーリーを追っているのだが、二度目からは背景をまじまじと見ることにしている。
是枝作品では一度目から背景をまじまじと見てしまう。

見ていて、不思議な感覚に陥る。
それはあたかも、旅先の見知らぬ土地で我が家への帰路を見つけたような気持ちである。
またそれは、例えるなら、親の運転する車に乗って少し遠出した帰り道のようなものだ。親がコンビニで飲み物を買ってくる間、静かな車内で帰宅の寂しさとわずかな安堵を自覚する時のような気持である。

「そして父になる」にそういうシーンがあるわけではないのだが、電車の中、車の中、道路、公園、家の壁に貼られた教材の一か所だけはがれたテープ、なんかをみていると、そんな気分になる。

ストーリーについて語るとネタバレも甚だしいことしか言えないので控えるが、どの場面でも音楽の使い方がいい。過剰でないが、情感がある。

あ、あとこれは私の好みなんですが、俳優陣がまたたまらないんですよね。
「福山が好きじゃない」と言っていた友達が「この映画の福山はめちゃくちゃ福山らしいのになぜか好き」と言っていた謎の理屈がわかってしまう。
下手に好物に苦手な食べ物混ぜて食べさせられるより、苦手な食べ物を丸ごと星空の下でバーベキューして食べたほうが克服できそうなのと一緒だろうか(個人の経験に基づきすぎていて参考にならない例え)。

真木さんなんかはもともと顔が好みだからMOZUみたいな役でもうれしいんだけど、この映画の真木さんがやっぱり一番好きだ。

主役はもとより脇役の滋味も深い。一瞬出てくる井浦さんも良い。

ただリリーフランキーはずるい。リリーフランキーが出てきたら降参するしかない。あの人は何だ?万能調味料って呼んでいい?。


最後に一個だけ、ギリギリネタバレめいたことを言わせていただくと、
ラストで彼はスタートラインに立ったのであり、子供が納得するのも彼が本当に変わるのもまだこれからで、「ああ、『そして父になった』のではなく、『そして父になる』んだなあ」と思った。

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