いめ

いめ。つまり、しっぽの巻いてないいぬです。

違います。


「濃い」
こいつ、ちょっと変わった形容詞じゃないですか。
たとえば、固め、暗め、薄め、みたいに普通は語幹に「め」をつけるところを、「濃い」だけは「濃いめ」なんて妙な接続をやっている。
元々の言い方は「濃め」だったのかもしれないが、エヌエイチケーで「濃いめ」と言っていたのでこっちが現代の一般的語形であるのは間違いない。

そういえば名詞でもそうだ。「うすねず」の反対なら「こねず」になりそうなのに、「こいねず」色だ。「うすくち」と「こいくち」もそうだ。

「濃い」とは、一体何なのだろう(発音だけなら哲学的思春期のような一文である)。
「濃め」でなく「濃いめ」が広く使われている理由は、いくつか推測できる。
たとえば、「こめ」だと「米」と似ているから。あながち冗談でもなく、他の言葉と混同されやすい音の言葉が、カブりを避けるために変化するというのは有る話だ。たとえば「ら」抜き言葉は、「ら」を抜くことで受け身ではなく可能の「(ら)れる」であることがわかりやすい、という実用的側面がある(と思う)。
もしくは単に、「こめ」だと語幹部分が言葉全体に占める割合が少なすぎて、意味がとりづらかったから、というセンもあるだろう。


そういえば、大体の「い」系形容詞は語幹が二音以上あるが、「濃い」は「こ」一音だけだ。
他にも語幹が一音の他の「い」形容詞も同じように「いめ」となるのだろうか。

それを検証しようと思って探したのだが、「酸い」「愛い」「良い」しか思い付かなかった。
語幹が一音の「い」形容詞というのは、なんとこんなに少なかったのか。
念のためグーグルどんにも聞いてみたが、一般的な語は他に「ない」くらいしか見つけられなかった(「ない」ことを表す「形容」詞というのもおもしろいが、それはまた別のお話)。

しかし困った。これでは検証はできない。
「酸いめ」「酸め」「愛いめ」「愛め」「良いめ」「良め」のどれも、聞いたり見たり使ったりしたことがないからだ。

ただ、仮定の話にはなるが、もし三語に「め」をつけた言葉を口に出すとしたら、やはり「語幹+め」ではなく、「語幹 い+め」にしてしまうような気がする。そのほうが意味が分かりやすい気がするし、「住め」「梅」「嫁」と混同されなくてすむ。


今後、語幹が一文字の「い」形容詞が若者言葉として発明され、それに「め」がつくことがあったら、「い」の処遇はどうなるのか。

そんな、都合のいいことがあるかどうかは別として、必見である。


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