女神
9年前に突然倒れ、3週間意識不明という経験がある。
ずっと病院のベッドにいた。…らしい
私は朦朧とする意識の中で、女神を見た。
確かに見た。
女神はいつも優しく微笑んでいて、ずーっと私を見守っていてくれた。
私はその微笑みに助けられた気がする。
これが、女神か。
朦朧とした意識の中でもそれだけは覚えている。
ありがとう、女神さま…
それにしても女神って意外と日に焼けた褐色の肌なんだな。
それにしても女神って意外とエラが張ってるんだな。
それにしても女神って意外と口が尖ってるな。
女神さまは意外とブスなんだな。
思い描いていた女神像とは全く違っていた。
だが、優しさに溢れ、私はいつも心を満たされ、
暖かい気持ちにさせてくれた。
女神さま、本当に本当にありがとう。
そして、女神様のおかげでか、私の意識は徐々にハッキリしてきた。
女神は私の目の前にだんだん、その姿を現してきた。
女神の微笑んでいる目はよく見ると何か小さな文字が並んでいる。
ん?
ん?
女神の正体は、、、
私の目の前にぶら下がっているデッカい点滴だった。
気付けば、私は鼻からチューブを入れられ、
点滴で直接、胃に食事を運んでいたのだ。
満たされていたのは胃袋だっのだ。
そりゃ、ずーっと目の前で私を見守って助けてくれる命の恩人のはずだ。
ある意味、女神で間違いない。
私の女神は点滴だった。
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