やらかしちまった①
人生も半世紀以上になると、いろんな
「やらかしちまった」過去が誰しもあるだろう。
酔っ払っての「やらかし」はキリがない。
私の場合、酔っ払ってるときはもちろん、
酔っ払ってなくてもけっこうやらかしちまってる。
姉に言わせると、
私は、人が一生かってもやらない恥ずかしいことを
毎月、いや週一で「やらかしてる」とのこと。
自覚症状のない事がほとんどだが、
さすがに自覚症状のある「やらかしちまった」を思いつくまま書いてみよう。
そうだな・・・
一番に思いつくのはやはり、
「モジモジくん事件」
だ。
あれは、恥ずかしかったというか驚いたというか
…まさに、やらかしちまった。
私は、その時、もう九州の故郷に帰ってきていた。
そして、東京時代の職場の同期である友人Sちゃんの結婚式に呼ばれた。
久々の東京だ。
冬だった。
私は気合いを入れて、披露宴で着る服と共に、
冬の東京の街を格好よく闊歩する自分を想像し、
ちょっと素敵な黒のロングコートまで奮発して新調した。
そして、上京。
Sちゃんは、私の宿泊するホテルまで用意してくれていた。一緒に披露宴に参列する同期のNちゃんとツインのお部屋だったので嬉しかった。。
披露宴は楽しかった。
久しぶりの職場の仲間に会えて盛り上がった。
翌日、私は別の友人Tちゃん親子と会って
ランチしてから九州へ帰るよう飛行機の便を予約していた。
朝からホテルの部屋で帰り支度。
なんだか寂しかった。
やっぱり東京は賑やかだ。
華がある。
一緒の部屋に泊まったNちゃんとも話題が尽きることなく、
帰る準備もそこそこに出来る限りの時間を語り合った。
「楽しかったよね〜。この日のためにコートまで買ったもん♪」
私はコレよ!コレ!とファッションショーさながらに着て見せた。
ランチする友人が車でホテルに迎えに来てくれた。
私は、引き出物や着替えなどの荷物をバタバタとまとめて
ロビーから宅急便で送る手配をし、
身軽な状態になったところで、
Nちゃんに別れを告げ、
迎えに来てくれた友人Tちゃん親子とのランチタイムへ向かった。
Tちゃんの子供は当時2、3歳だったかな。
女の子。可愛い盛りだ♪
そして私によくなついてくれた。
お昼は以前、よく一緒に行ってた激辛のラーメン屋だ。
クセになる味で、私は東京に来たら、コレを食べたい!
って決めていて、それはTちゃんも一緒だった。
新宿にあるその店!!懐かしい!!
手狭な店内は込み合ってて、熱気もムンムンだった。
私は、コートを脱ごうとボタンを外した。
その時だった。
えっ!スカートを着てない!
マジか⁈
コートの下は黒のタートルセーターとタイツだけではないか。
それはまるで、かつてお笑いのとんねるずが
「みなさんのおかげです」の企画でやってた
タイツを頭からかぶった
モジモジくんみたいだった。
慌てて、コートのボタンを閉じ、頭の中をフル回転させた。
そうだ!
私は、朝、着替えている最中、まだ下のスカートを着る前にコートを着てしまったのだ。
そして、ロングコートを着てしまった私は
荷物の中にスカートから何から詰め込んで送ってしまったのだ。
やらかしちまった
私は、決して脱ぐことの出来ないコートを着たまま、
ぶるぶる汗をかきながら激辛ラーメンを食べた。
店内でコートを着ているのは私だけだ。
もちろん、今みたいに、適当な洋服屋などないし、飛行機の時間もせまってるのですぐに空港に向かわねば。
ロングコートだから、まぁいいか。
脱がなければ大丈夫だろう。
でも、本当の悲劇はこれからだった。
空港に着き、
Tちゃん親子がギリギリまで見送ってくれた。
可愛いTちゃんの娘が別れを惜しんで泣き出した。
「また来るからね、泣かないでね」という私の方が涙ぐんでいた。
そして、手を振り、搭乗ゲートをくぐった。
キンコーン と鳴った。
えっ!
そこで私はコートの下がモジモジくんだったことを思いだし慌てた!
「あの、あの、私、コートの下、何も着てないんです!
荷物に入れて全部送ってしまって!
だから、あの、その、、
このコートを脱ぐわけにはいかないんです、、」
動揺しまくっていた。
涙目のまませがむように懇願していた。
係の人は、私とは真逆で超冷静に
「別に脱がなくていいですよ」
そうだった。別に脱ぐ必要はなかった。
耳の端まで赤くなった。
むしろ脱がされることより恥ずかしかった。
センサーをあてられ、またピーッと鳴った。
「ポケットの中に何か入ってますか?」
コートのポケットをまさぐった。
出てきたものは、、、
「毛抜き」だった。
なぜに私は毛抜きをポケットに入れてたんだ!!
そして、小さい毛抜きだけをポトンとトレーに入れて、
またベルトコンベアに乗せた。
あゝ、この様子をTちゃん親子が見ているぅぅ~
…と思い振り返ったら、
すっかり泣き止んでカートに乗せられた
娘とTちゃんが
遠くの方に歩いて行ってるのが見えた。
何やってんだよ、私は。
ツイてない時は、とことんツイてない。
私は大好きな「舟和の芋ようかん」をお土産に空港で買っていた。
お手頃サイズでお土産に配るのにちょうどいいのでたくさん買っていた。
しかし、当時は冷蔵状態のお土産の対策があまりされていなくて普通の紙袋だった。
この大好きな芋ようかんが、
まだ動揺の残る私に追い打ちをかけた。
動く歩道に乗っているとき、
舟和の芋ようかんを入れた紙袋の底が湿気で破れたのだ。
動く歩道の上に芋ようかんが散乱した。
後ろから人も来ているし、歩道も動く。
なんてこったい!
必死に拾い集め、持っていた自分の小さなバッグやポケットに詰め込む。
とうとう動く歩道の最後のところまできて、引っかかった芋ようかんの残りを拾う。
誰も何もしてくれない。
私の芋ようかんをまたいだ人までいた。
なんだか、もうやるせない気持ちになりながら飛行機の機内に入った。
芋ようかんでパンパンのポケットのロングコートを着て乗るには汗かくほど機内の暖房は効いていた。そして満席。
コートはもちろん脱げない。
もうとっくにヤケクソにはなっていたが、、、
皮肉なことに、私の隣の席は白い半袖Tシャツ姿の太った外国人のおばさんだった。
見るからに対照的な私達は傍から見ると滑稽だっただろう。
その外国人のおばさんは、まるで、
「あなた汗かいてるじゃない!コート脱げばいいじゃな い?」と言わんばかりに首をかしげながらこちらを見ている。
私はずっと寝たフリをした。
だって、コート脱げるわけないじゃん。
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