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2020年8月の俳句。

隠れ田の アオミドロして 地蔵盆

地蔵盆は、地蔵菩薩の縁日で、厳密には毎月24日であるが、
一般的にはその中で特にお盆にも近い旧暦7月24日のものをいう。
ただし、その対象は寺院に祀らている地蔵ではなく、道祖神信仰と結びついた「路傍や街角のお地蔵様である。

最近は耕作放棄地が広がり、小さくて機械の入りにくい田はそのまま 沼や草地のようになっているところもある。
子供のころ木々に覆われた草地のなかに小さな沼のように存在する田を密かに自分の場所のように感じて、草地でほんを読んでり物思いにふけっていた。そうした田を私は隠しだと呼んでいた。



みな海へ 猫と風鈴 がらん堂

夏の海辺の通りはある時刻静まり返ったようになることがある。
昼から三時前の時間帯だ。宿の客はみな海に出かけてしまうせいだ。
家の人間は家の奥で静かにしているわけだが、
なにか街そのものがもぬけのからになってしまったような静けさに包まれるのだ。



七夕竹の 森に目覚めよ 七の月

短冊を セントクロスも めくりおり

立秋から俳句では秋の季節となる。
七夕は旧暦では新暦の八月に行われていた行事ということで、俳句では秋の季語になる。
七七夕竹とは七夕に用いられている竹のことである。
短冊をつけた七夕竹が森となっている世界に紛れ込んでしまったという夢を見た。



夏座敷 足裏に 白き 花弁かな

座敷の窓ぎわの板の間にハイビスカスが置かれている。
150cmほどの高さで今年は白い花を次々と咲かせている。
昨年はほどんど咲かなかったのに、花にも裏表の年があるのだろうか。
しかし今年は訪ねてくる客もなく、せっかくの花をみせることもできない。



籐椅子の 黒びかりして 海見える

炎天に 海泡立ちて 人魚ども

ビーナスの誕生についてギリシャ神話では『ゼウスの父クロノスが、その父ウラノスの男根をアダマスという金属の鎌で刈り取り、海原に投げ入れました。 落ちたところから白い泡がわき立ち、その中から女神アフロディーテ(ヴィーナス)が誕生しました。』 とある。海の泡立ちは生命の誕生と愛欲を表現しているらしい。
今年のコロナの夏は容赦ない炎天が続いた。海はうみびらきをすることもなく、海水浴客も来ない静かな浜辺となるはずだった。
しかしどうだろう、ちりちりと焼けつくようなヒザしと白熱に覆われた浜辺には若者たちが押し寄せてパラソルが潮風にゆれている。
海に泳いでいるのは幻か、それともビーナスならぬ 人魚どもか。



小魚に クラゲは傘を さしかけぬ

小魚たちは身を守るためにクラゲの傘の中に入って天敵から身を守っているという。
安易に近づいたものはクラゲの傘にある毒に刺されてしまうから容易にちかづくことはできない。



青桐に ミンミン鳴いて 海の風

ミンミンの 浜のソリスト 気まぐれに

俳句ではミンミンゼミのことをミンミンと呼ぶことが多い。
ミンミンゼミというと鳴き声から来る愛称のように思われるが正式な名前である。
ミンミンゼミはミンミンゼミ族に属している。
そしてミンミンゼミはアブラゼミやクマゼミに比べて耐熱性が弱いと言われている。
それゆえ気温の高い都市部よりも山がちな地方や海岸に広く生息しているという。



土用とて 波音遠く 宿一人

お盆を過ぎると 土用波といって波の高い日が多くなるといわれているのだが、それは台風がこの時期に発生するせいである。
しかし今年は比較的穏やかな海が続いている。



たそがれて 朝顔に水 欲も無く

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