このハスキーボイス……エッチ過ぎやしませんか。坂本冬美さんの「いとしいひと」②
聞いて、ドキッとした。
出色にエッチだからだ。
坂本冬美さん(55歳)の「いとしいひと」の次の箇所である。
エッチ過ぎる。
♪♪……
抱きしめられるたびに 孤独の意味を知る
誰にも見せたことない自分を
あなたにだけは見せてよかったわ
ふたりでむかえる朝日のまぶしさに震えて
……♪♪
振り返ってみる。
この歌は(パッと見で分かる)不倫の歌だ。
一組の男女(少なくとも女性は既婚)が、
ふと知り合って、大人の関係になる。
最初はゲーム感覚だが、やがて深みの方にはまって行ってしまう。
そしてはまるほどに「自分の孤独の意味を知る」。
いいですね。
不倫の労苦が、横に外延する…
(例えば島津ゆたかさんの名曲「ホテル」=なかにし礼さん作詞)のような
…そんな不倫歌ではなく、
情念は自分の内面を掘り下げて進む。
残酷だ。
そして自分の心身をまるごと裸にしてしまう。
残酷である。
これがスケベといわずしてなにをスケベというのか。
特に次の句で私の胸が高鳴った。
♪♪…だれにも見せたことない自分を
あなたにだけは見せてよかったわ
ふたりでむかえる朝日のまぶしさに震えて……♪♪
私の心がさんざん高鳴ったあと、ひょいとこんな言葉が頭に浮かんだ。
♪♪…だれにも見せたことない自分を
仏さまにだけは見せてよかったわ
ふたりでむかえる朝日のまぶしさに震えて
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……♪♪
おかしいかしら。
この作品の作詞・作曲は松尾潔さん。ヒット請負人といわれる天才である。
◇
さて……坂本冬美さんの魅力のひとつは、そのハスキーボイス(かすれ声)だ。
そもそもこのかすれがエッチなのである。
変化してきた。
例えばデビュー曲「あばれ太鼓」(1987年発表)をデビュー当時の映像で聞いてみると、縦横にハスキーが交じっているが、うなりやコブシの〝表声〟に引けを取らない。
https://www.youtube.com/watch?v=Lf5UuUzy5Y8
硬質の芯がある堂々としたかすれだ。
https://note.com/waraigoe/n/n332f1143df3d
しかし年月が流れ、冬美さんのこの声にも風雪の味が徐々にしみ込んだ。
声帯の老化という専門家もいるが、進化でもある。
芯が取れ、悲しい軽みが膨らんだ。
哀愁ハスキーボイス。
いいじゃないか。
機が満ち、曲「いとしいひと」の登場(2012年)である。
冬美ハスキーが、
「Ahh 初めて会ったときから
Ahh 微笑みに惹かれてた
Umm-Ahh それだけじゃもの足りず
声かけたのは僕…」のうちの
特に「Ahh」と「Umm-Ahh」の部分で本領を発揮する。
このあえぎ、ずばりあのときのものじゃないのかい。
ウーン、
エッチ過ぎる。
エッチ過ぎて素晴らしい。
「ものごとはやり過ぎ目にしてやっと目標に達する」(確かレーニン)
(この項終了)
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