「文学部なんて…」と思う、文学部を目指す、もしくは文学部を卒業したあなたへ

私が文学部を卒業したのはもう5年以上昔になります。
なぜこんな記事を書こうと思ったかと言うと、
「文学部なんて卒業してなんになるのか」「文学部で学ぶ事に意味があるのか」「なんのスキルにもならないのではないか」
そうした劣等感のようなものから、最近の自分は解放されつつあるなあと思ったからです。
端的に言えば、文学部で学んだ事が生かされていると感じることが多く、
文学部への進学を悩んでいる方、文学部を卒業したものの大した意味はなかったように感じている方へ、少しでも自信を持っていただけたらなと思ったことがきっかけです。
なんだか大きく出てしまいましたが、文学部いいぞ!と言う推し語りに近いです。

簡単な経歴ですが、私は地方国立大学の文学部人文学科を4年で卒業しました。
専攻は日本近代文学で、芥川龍之介や太宰治などが活躍したあたりの文学作品を研究していました。
我ながら、the文学部だと思います。
作者の気持ちを考えてなんの意味があるの?って言うあれ。
私も大学受験前は、(文学部に将来性はあるのだろうか、就職は?)等で悩んだ記憶があります。
就職については、どうにかなるよと高3もしくは大4の自分には伝えたいところです。
正直文学部に限らず文系の凡人の就職先なんて大差なく、むしろ汎用性高そうみたいな理由で採用してくれるところも多いですよと。

”汎用性の高さ”

正直今現在文学部での学びが生かせていると感じるのもこの一言に尽きるかもしれません。

文学部の汎用的スキルその1 相手の思考をめちゃくちゃ考える

「作者の気持ちを考えてなんの意味があるの?」
これは冗談半分本気半分くらいで文学部に問われがちな内容ではないでしょうか?
お恥ずかしながら、学部生の時ははっきり言い返すことができませんでした。
しかし今なら、「作者の気持ち、意図を研究することは、人間の言葉や気持ちを受け取る時役に立つ」と答えます。


何を思ってこの文を書き、何を伝えたかったのか。
文学研究は作者が言いたかったことをなるべく正確に受け取ろうと言う試みです。
これが、意外に難しい。
研究なので、私の思い込みではいけません。
当時の社会情勢、作者の経歴、交友関係、エッセイや手紙なんかも集めるだけ集めて、作品だけでなく様々な資料から考察します。
また、自分の目線だけでは限界があるため、視野を広げるために(そもそも研究の基本ではありますが)先行研究を読み漁り、ゼミで先生や他生徒の意見を聞くことも重要でした。
作者の意見、他人の意見、そして自分なりの考えを整理して初めて正解らしき”作者の意図”に辿り着けるのです。

「いや、作者に直接聞けば早いのでは?」と言うご意見もあるでしょう。
私はそうは思いません。
人間は、言いたいことを100%相手に伝えることは不可能だからです。
ですから作者に直接聞くにしても、100%正確ではない言葉を、なるべく100%に近く=誤解なく受け取る聞き手側の能力も必要だと考えます。
誤解なく受け取るためには発言の裏側(環境とか経緯とか)まで推察する必要があり、文学部では言葉以外の要素も加味して”言葉を誤解なく受け取る”技術が磨けたと思っています。

これが、仕事でとても役に立つんですね。
働く上で接する人たちは、作家とは比べ物にならないくらい言葉が足りないことが多いです。
それは仕事の速度感や環境の違いなんかもあるんでしょうが兎に角、
上司からの指示、クライアントの要望、同僚からの伝言を正確に理解するだけで結構重宝されます。
言葉の理解が早い、誤解しないよう情報を集める事によって仕事が正確
って仕事上とても大切で、結局よく言われるコミュニケーション能力ってこう言うことかなと思います。

文学部の汎用的スキルその2 自分の価値観や感情と向き合い答えを導ける


その1と連鎖して、文学部では自分の考えを持たざるを得ません。
作品を読む→自分の考え(作者の意図は?物語の意味は?)を持つ→自分の考えの正当性を検証する
わけですから。
そして何よりも、”文学部”で自分の考えを検証し続けると言うのは得難い経験だったと思います。

どの学部でも、なんらかの研究のために自分の考えは検証しますが、文学部では自分の価値観や解釈、そういったものに対しての検証し続けます。
高校生まで忙しなく、決まったレールに乗って生きているとあまり経験ないことではないですか?いや、私は割と考えこんでしまう高校生でしたが、それでも自分の価値観について、じっくり腰を据えて考える時間はなかったように思います。

レールに乗っていれば、内面的に考えて答えを出さなくても別に全然生きていけるんですよね。

大学時代もあまり意識的だったとは思いませんが、就職、転職を経て
文学部で自分の内面と向き合う時間を持てていた事に感謝をしています。

生きていると、正解が分からない問題によくぶつかります。
仕事を辞めるべきかとか、次にどんな仕事に就くべきかとか、自分はどう生きたいのか、何がしたいのかとか。
正解がないからこそ、なるべく正解に近いものを探したいわけですが、その時に文学部的回路が役に立っている…気がします。急に弱気ですみません。
この感覚は自分の中でまだちょっと抽象的みたいです。

ただ、日本人は自分の感情とか価値観に向き合う時間が少ない気がしていて、文学部は比較的その時間が多いように感じます。

これも最近生活で生かされていると感じることが多く、感情的だったり正解がなかったりする問いに対して、正解に近そうな提案ができるって結構希少みたいです。

文学部でなくてもこういった能力に優れた方はいると思うんですが、
文学部の専門性って結局、他人と自分、ひいては人間の思考を徹底的に考え抜くってことなのかなあと思います。
これはコミュニケーション力とも言えますし、どんな分野でも人間と関わっていく以上重宝される能力です。
ですから、文学部卒だから専門性ないな…と落ち込む必要は無いなと。

文学部で培った能力はとても心強く、頼もしいなと、誇らしく思うことが多くなりました。

最後に、このノートをまとめるきかっけになった阪大文学部長の記事をご紹介します。https://withnews.jp/article/f0170724005qq000000000000000W00o10101qq000015619A

文学部への進学を悩んでいる方、文学部卒に劣等感を感じている方がちょっとでも前向きになれたら嬉しいです。

文学部はいいぞ!

終わり

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