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老衰ってなに

私と結婚するまで哺乳類と暮らしたことがなかった夫。
飼い犬が高齢になり歩けなくなってきた頃
夫から言われたことがあります。

こんな風にだんだん弱っていって老衰で死ぬまで
あとどれくらい生きるの?
寿命とか目安は?と。

悪気があって言ったことではないと今はわかります。
世帯主としてのこれからの計画や心づもりもあったことでしょう。

しかしそれを言われたとき私は単純に

なんて縁起でもないことを聞くんだろう。
デリカシーないな。
こんなに私は犬を愛していることをわかっているくせに
なんで嫌なことを想像させたり暗い気持ちにさせるんだろう。

と思いました。

私は幼いときから家には犬がいて
家族として過ごしてきました。

雑種
秋田犬
オールドイングリッシュシープドッグ
大型犬を好む家でした。

現在の飼い犬はグレートピレニーズ。
体重は最大で63kgにまでなったことがあります。
超大型犬と分類されます。

秋田犬は16歳まで生きてくれました。
がんで亡くなりましたが
介護した期間は亡くなる少し前に立てなくなってからだったので、あまり苦労したという記憶はありません。

OESは3歳で急死。
死因はわからないままです。

なので本格的な介護生活はほぼ初めてのことで
私もわからないことだらけでした。

そんな私があとどれくらい生きるかなんて
わかるわけないじゃん
だいたい老衰ってなによ。
体が弱って眠るように亡くなること?
それにも病名あるだろうよ
と苛立ちました。

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数日前、義母と電話していて言われました。

(近所の)○○さんのとこの●●ちゃん(柴犬16歳)、先週亡くなったのよ

まあ高齢だったし老衰よね。
最期は飼い主の腕の中でコロンと逝ったって。

夫から言われたときと同じ違和感を感じました。
老衰だから仕方がないって人間はよく言うけど
なんなんだろうと。

考えを整理してみようと。

「老衰だから仕方がない」って
なんとなく心を落ち着かせるため
または、人に死因を説明する時にオブラートに包んでやんわり理解させるための
都合の良いフレーズなのではないかと思いました。

「老衰とは」でググると…うん、よくわからん。

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往診に来て下さった獣医師に、カテーテルで膀胱洗浄をしている間に聞いてみました。

よく我々素人が言う老衰って
本当は死因がちゃんとあるんでしょ?
例えば体力が落ちて食べられなくなってきて
多臓器不全とかなんとか不全とか、
何かしらの原因はあるんですよね?

それを人間が勝手に老衰という言葉で納得させているだけですよね?と。

そうですね、我々動物医療に携わっている者は
あまり「老衰」という言葉は使いません。

どちらかというと僕も仰るとおりのイメージです。

ただ、動物の飼い主さんはいろんな考え方をお持ちです。

新しいことを取り入れていこうというのが病院の方針というのもあって、うちの病院にかかっている飼い主さんは割と治療に熱心な方が多いです。

それぞれの飼い主さんが最期に
「これだけのことをやってあげたのだから」
「これ以上延命しても苦しませてかわいそうだから」
「最低限痛まない様にしてくれたら」
と納得して看取っていただけるように手助けするのが僕たちの使命だと考えています。

と獣医師は仰っていました。

それを聞いてなんだかハッとしたのです。

獣医師は明らかに年下の方。それなのに、こんな素人の私が苛立った過去のことで自分のモヤモヤを晴らすため、自分考えを正当化するために出た質問に、即座にしっかりとしたお考えを答えてくださったことに、きっと普段から信念を持ってお仕事されていることが瞬時に伝わりました。

嗚呼、自分が恥ずかしい…。


治療に躍起になっていて
回りが手助けしようとしてくれていることに
感謝が足りていないと気づいたと同時に

飼い主それぞれにいろんな考えがあって
なるべく自然に逝かせてあげたいというのもひとつあるんだなと。

心を開いている相手に対しては
私はバカ正直になんでも人に話す方なので
きっと病名やどんな症状だったか
どんな介護生活だったか包み隠さず人に話してしまうことだと思います。

しかし相手に気を遣わせないよう
または、これ以上は深く聞かないでほしい
という意味を込めたニュアンス
「老衰だから」は私には都合がいい様に思えてしまっていました。

そこには他人は知ることがない闘病生活や
獣医師や家族の支えがあったかもしれないのに
田舎の人はまだ動物医療に対して積極的じゃないからそんな風に言うんだろうなと思っていました。

浅はかな自分、反省。
また犬に成長させてもらった気がした週末でした。

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