投打に輝き放て~原樹理の再"輝"を待つ~

(※全て敬称略)

宝石のような投手

宝石のような○○

皆さんは「宝石のような○○」という表現をご存知でしょうか。
主に某掲示板で使われている言い回しですが、今やTwitterどころかパ・リーグTVなど野球のコミュニティでは広く使われるようになりましたし、そもそもアメリカの新聞がメジャーリーグについて報道した際の表現が由来です。なので堂々と取り上げます。

上記の通り元はニューヨークタイムスにおけるヤンキースの記事で、田中将大(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)に対しての評価でした。

それが「宝石のようなマサヒロが帰ってきた」というフレーズです。

やはり素晴らしい投手、いや選手というのは国境など関係なく、ファンやメディアにとってまさしくキラキラ輝く宝石のような存在でしょう。

スワローズの「宝石」といえば?

さてここで話は変わりますが、筆者の応援する東京ヤクルトスワローズで「宝石のような」と冠されるのはとある選手がほとんどと言っても過言ではないでしょう――それこそがタイトルにもある原樹理、背番号16の投手です。2015年のドラフト会議で外れ1位指名を受けて入団しました。
(その際、後にドラフト会議のルールをも変えた伝説的な事件もありました。ご存知ない方は是非「真中満 ガッツポーズ」で検索してみてください、元気になれます)

原樹理と書いて「はらじゅり」と読み、余談ですが原樹"里"ではありません。ご注意くださいませ。
スワローズに明るくない方でもここでハッとお気付きの方も多いかもしれません。そう、そうなんです。駄洒落のニュアンスが強いんです。
原樹理。原じゅり。原ジュエリー。
決してジュエリーが名前の由来ではなく、「性が木のように茂るように」という意味が込められています。
でも彼は活躍する度ジュエリーと称されて、ファンの間では「宝石のような(原)ジュエリー」と、もはや重言でしかない称賛が飛び交うのは恒例行事です。

悩める右腕と左腕たち

絶望の淵を蹴り上げて

ただ、そんな彼も残念ながら順風満帆とは言えない選手生命を送っています。
安定しているときは流石ドラフト1位と感嘆のため息すら出るピッチングなのですが、荒れてしまうときは荒れてしまう。
スワローズの選手らしく怪我に苦しんだり、援護の有無が極端だったり。最早自分ではどうしようもないことにも泣かされるあたりがいかにもスワローズらしい、なんて応援していて少し複雑な気持ちになることも多いです。

怪我に泣かされているのは今年もそうです。
故障の旨を知ったのは、実はお恥ずかしながら開幕直前特番でのインタビューでした。
近年スワローズは首脳陣の意向かはわかりませんが、怪我人やその内容について伏せがちで、他にも様々な選手がファームにすら長らく出ていないことで気付く、なんて展開も多いです。

そんな彼もようやくファームで実戦登板を重ねており、少なくともある程度まではリハビリが進んだのだと、ファームの経過速報を見て非常に嬉しかったあの感情は今でもすぐ思い出せます。
やっぱり、チームスワローズですから。絶望の淵から這い上がってくれることは嬉しいに違いないのです。

燕の台所事情

セ・リーグを贔屓にされているならご存知の方も多いかと思われますが、伝統的にスワローズは何故か投手が消えていくチームです。ここ何年も先発が弱点と強調されるほど、補強しても補強しても成績不振はもちろん、故障や中継ぎ転向。次々に消えていくのです。
もっとも、悲しいことに故障に関しては野手も同じですが。
(これもまた「ヤ戦病院」と新聞に揶揄されています)

耐えかねてこんなコラまで作りました

なんと今年も、近年ドラフト1位で指名した、現役の先発を3人も欠いたまま開幕しました。今季の即戦力としてオフの間に補強した投手は、昨年のドラフト1位である吉村貢司郎、そして助っ人外国人のピーターズ、エスピナルの計3名。
しかしピーターズも今は復帰していますが一時戦列を離脱しており、エスピナルはビハインドロングリリーフ……とこの記事を書き始めたときはそう認識していましたが、ちょうど校正中にド派手な燃え方をしたので、残念ですが戦力としてはカウントできないと思います。
よって先発だけで既に戦力がマイナス1でしたし、一時的にはマイナス2ですらありました。

加えて悲しいことに高梨裕稔の調子が芳しくなく、高橋奎二も抹消以来長らく登板していません(もっとも1軍合流はしていますが)
石川雅規にも先日今季初の白星があったけれど、やはり年齢故にかなり登板間隔を空けての起用になってしまいます。

やはり、先発投手が足りないのです。

陰があるなら光あり

「期待」ではなく「希望」

上では苦しいことばかりを並べました。残念ながら全て事実であり、スワローズのことをしっかり把握して応援するなら目を背けられないことたちです。

それでも世の中悲劇的なことばかりではないとも思います。

まず、先述の通り原樹理がファームで何度か登板するようになったこと。ファームでの登板というと、同じく故障で1年リハビリに費やした奥川恭伸もファーム公式戦で数イニングを投げられるようになりました。
またこちらは噂程度ではありますが、彼らと同じくドラフト1位の山下輝もキャッチボールを再開しているという話を小耳に挟んでいます。

こういう話になると「期待しすぎるのは、いざダメだったときに落ち込むから避けたほうがいい」という助言が必ず出てきます。
が、持論として期待と希望というのは個人的に違うと思っていて、「そうなるものだろう」と成し遂げる前提なのが期待、「こうなってほしい」と未来を肯定的に予想するのが希望だと解釈しています。
確かに求めすぎると結果によっては傷付くかもしれません。が、「こうなってほしい」「こうなればいいな」と前向きに願うことは悪くないんじゃないかなあと考えています。

ラッキーボーイもひとりの男

さて、原樹理という男は何かと「持っている」男だと、なんとなく思っています。
成績が振るわなくても勝ち運が強いときがあるのも原樹理、2019年のかのストレート16連敗を止めたのも原樹理、2021年の優勝直前に続いていた連敗を止めたのも、しかも決勝打すら放ったのも原樹理。
そもそもこの記事を書こうと思ったのも、最近のスワローズで落ち込むことが多く、少しでも元気を出そうと走者一掃タイムリーの試合を何度も動画で振り返っていたのがきっかけでした。

申告敬遠後の走者一掃タイムリー。この打点がなければあの試合はもしかしたら負けていたかも――そして、優勝を逃していたかもしれません。
爽やかなイケメンである彼がそんな雰囲気はかなぐり捨てて、セカンドベース近く雄叫びを上げる姿は勇ましく、その勢いとベンチの熱狂はそれだけ彼、いいえチーム全体が死に物狂いで勝ち抜こうとした証に違いないかと。
"作った"振る舞いなんかより、力強く吠える姿のほうがもっとかっこいい――そう思うのは筆者だけでしょうか。

輝き放て

上の動画でもある通り、タイムリーの瞬間こそいきものがかりの「気まぐれロマンティック」を原曲にした応援歌(共通テーマβ)が流れていましたが、一般的にスワローズの投手が打席に立つ際は投手用の応援歌が流れます。

闘志燃やして攻めろよ 投打にき放て
勝利をその手で 掴み取れ

全国ツバメ軍団作・投手汎用テーマ(応援歌)

あの時の原樹理は間違いなく、彼の選手人生の中でもトップレベルに輝いていました。
今でこそ反射する光を受ける機会が無いけれど、彼という宝石が再び輝いている姿はすぐに想像できます。
もっとも、それが照り付ける太陽によるものか、はたまた三千ルックスの光線によるものかはわかりませんが。

少しだけ関係のないお話をさせてください。
現在のスワローズには「光」に関連する名前を持つ投手が多いです。
既出の山下輝に加え、星知弥、長谷川宙輝など。奇しくも故障や配置転換、育成での入団など大きな壁にぶつかってきた選手ばかり。

それでも彼らは諦めませんでした。まだまだ万全と言い難いところも多いですが、着実に前へと歩みを進めています。

こじつけかもしれませんが、きっと彼らと同じく、原樹理という宝石も再び光り輝くでしょう。なんとなく、そんな気がするのです。



そうそうあとひとつ。7月の誕生石がルビーなのですが、出典によるものの石言葉として「情熱」「勝利」といった意味もあるそうです。
「らしいなあ」って、思いません?

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