北朝鮮に悩まされる習近平

■北朝鮮の瀬戸際外交再開
 トランプ前大統領と金正恩の交渉で、北朝鮮による瀬戸際外交は中断した。バイデン大統領に変わると、世界情勢は米中対立が激化した。北朝鮮の存在は消え去り、アメリカ・イギリスを中心とした反中国包囲網が拡大。

 イギリスは空母打撃群をアジアに派遣し、日本を拠点とした連合軍が形成される。アフガニスタン情勢が悪化し、アメリカ軍の攻撃軸は一時的にアフガニスタンに移動する。しかし攻撃軸は直ぐに中国に戻る。そんな時に、北朝鮮が9月13日に巡航ミサイルらしきものを発射。

 9月15日になると、弾道ミサイル発射が報道される。これまで北朝鮮は沈黙していたが、瀬戸際外交を再開。北朝鮮は弾道ミサイル発射の映像を世界に公開し、世界との対立を恐れていないことを示した。

■習近平には迷惑な北朝鮮
 習近平はアメリカ軍とイギリス海軍の空母打撃群を、アジアから別の海域に移動させたい。中国に向けられた攻撃軸をアフガニスタン・イランなどに向けて欲しい。一時的ではあるが、アフガニスタンに攻撃軸が移動した。だがアメリカ軍とタリバンの大規模戦闘は回避され、しかもイスラム国系テロ組織が乱入。これでアメリカ軍の敵は、中国とイスラム国系テロ組織になった。

 一時的にアメリカ軍の攻撃軸は、中国からアフガニスタンに移動した。だが短期間で中国に戻る。習近平はタリバンを使って勝利したと思ったが、三日天下に終わる。さらに悪いことに、北朝鮮が瀬戸際外交を再開する。

 この頃から、北朝鮮の原子炉が再稼働していると言われるようになり、9月13日には巡航ミサイルらしきものを発射したと公表する。しかし在韓米軍は北朝鮮が主張する巡航ミサイルを探知していない。北朝鮮は巡航ミサイルが2時間飛行したと主張するが、探知されないのでは無意味。おそらく発射はしたが、途中で墜落したと思われる。

 北朝鮮は失敗を隠すためなのか不明だが、9月15日に弾道ミサイルを発射。これはアメリカ・日本のレーダーで探知され、命中精度は不明だが、確実に飛行したことは認知される。北朝鮮はアメリカ・日本の動きを確認したかの様に、弾道ミサイルを発射する映像を公開した。

北朝鮮、鉄道発射式ミサイルの映像公開 日本海の標的を「正確に打撃」
https://www.bbc.com/japanese/video-58582056

 北朝鮮が世界に弾道ミサイル発射を宣伝したのだから、アメリカを中心とした制裁が強化されても不思議ではない。さらに、在韓米軍・在日米軍が北朝鮮を攻撃する可能性も有る。それでも北朝鮮は瀬戸際外交を売るのだから、隣国の中国には大迷惑な事態になった。

■習近平には大迷惑
 中国から見れば、アメリカ・イギリスの空母打撃群がアジアにいる間は、北朝鮮は沈黙して欲しい。何故なら北朝鮮が瀬戸際外交を行うと、空母打撃群は戦闘に備えて日本付近で待機する。これでは、中国からの開戦奇襲も行えないし、最悪の場合は、連合軍に戦略的な場所を占領されてしまう。

 仮に北朝鮮と連合軍が戦闘を開始すれば?仮に連合軍が北朝鮮を占領すれば?在韓米軍が北朝鮮を占領した場合は、中国海軍の心臓部が在韓米軍の射程圏内。中国から見れば、渤海は最終防衛ラインだから、在韓米軍は北京に対してチェックメイトを行える。

 人民解放軍海軍・空軍の動向を見られるだけではなく、渤海を在韓米軍に押さえられるから、人民解放軍海軍は出撃も帰還もできない立場。首都北京は在韓米軍の射程圏内だから、共産党幹部は避難しなければならない。

 だがこの避難は、国民から首都を放棄して逃げ出したと思われる。そうなれば、易姓革命の引き金になる。仮に国民が動かないとしても、北京を放棄したことは事実。首都機能を離れた都市に移動しても、北京と同等の機能は得られない。

 最悪なのは渤海を失うことで、周辺の基地・工場は在韓米軍に生殺与奪を握られる。海軍基地は海からの攻撃には強いが、陸からの攻撃に弱い。だから作戦の基本では、陸戦部隊を敵国の海岸に上陸させ、基地の背後から陸戦部隊が攻撃するのが定石。

 人民解放軍陸軍を北朝鮮国境に集めると、今度は台湾侵攻を行うことは不可能。これは長期に渡り、中国は台湾侵攻を放棄することになる。中国が台湾侵攻を行うには、北朝鮮から在韓米軍が撤退してからになる。これは明らかだから、この状態でアメリカが北朝鮮から撤退させることは有り得ない。

 アジアのパワーバランスの要になれば、在韓米軍を北朝鮮から撤退させない。それどころか台湾と協力し、逆に台湾軍が大陸に侵攻する可能性も有る。これは中国には悪夢で、人民解放軍主力を北朝鮮国境から移動できないので、福建省が台湾軍に占領されてしまう。この未来は明らかだから、習近平としては北朝鮮の瀬戸際外交は迷惑なのだ。

■北朝鮮とロシアの目的
 北朝鮮は瀬戸際外交をしている。これは仮想敵国に戦争を売付け、仮想敵国が戦争回避目的で譲歩すれば成功。だが仮想敵国が怒って戦争を選ぶと失敗する。だから瀬戸際外交を実行する国は、コストが合わない小さなネタを売り付けるのが基本。

 米中対立以前の国際情勢であれば、アメリカが北朝鮮と戦争するのはコストが合わない。何故なら海上交通路から離れているので、海洋国家アメリカの国益に反しない。北朝鮮の地勢は、地政学・戦略で重要な位置に存在する。だが北朝鮮を占領すると、今度はアメリカが大陸の情勢に巻き込まれてしまう。

 海洋国家としては、橋頭堡である韓国に在韓米軍を置く程度で良い。これなら大陸に干渉できるのでコストが良い。この様なことから、アメリカは北朝鮮への攻撃を回避していた。だが米中対立になれば、北朝鮮の地勢は戦略で魅力的な場所になる。

 だからアメリカとしては、北朝鮮を攻撃することは、中国との戦争に備えた緊要地形の獲得。これを北朝鮮が積極的に行っているので、北朝鮮の狙いはアメリカではない。北朝鮮の真の狙いは、中国から食料の獲得だと思われる。

 北朝鮮で瀬戸際外交を再開すれば、アメリカ軍を北朝鮮に引き込みかねない。この回避には、北朝鮮に食料を与えて沈黙させること。見た目はアメリカへの瀬戸際外交だが、本音は中国から食料を獲得することだ。

 だが、これは北朝鮮単独の行動ではないと思われる。北朝鮮の巡航ミサイル・弾道ミサイルを見ると、ロシア製を指摘する者が多い。恐らくロシアで生産されたダウングレードモデルを、北朝鮮に供給していると推測する。

 何故ならロシアとしては、アメリカ軍をウクライナ・ジョージアから離れた北朝鮮に拘束することは都合が良い。アメリカはウクライナを巡り対立しているから、東側の北朝鮮にアメリカ軍が集まるほどロシアには喜ばしい。同時に中国としては大迷惑で、北朝鮮とロシアの都合で、中国を手駒にされるのだ。現段階では証拠は無いが、結果として中国は北朝鮮とロシアの手駒になっている。

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