中国に主導権が戻り始めた
■バイデン政権の表と裏
米中対立はトランプ前大統領から始まり、イギリス海軍・オランダ海軍・フランス海軍・ドイツ海軍の艦艇が日本付近に集まった。イギリス海軍の空母打撃群が日本付近に来たが、2021年の10月をピークに、米中の軍事的対立は陰りを見せている。
アメリカ海軍を中心とした艦隊が南シナ海・東シナ海で活動したことで、人民解放軍海軍の活動は縮小。実際に、人民解放軍海軍の軍事演習は縮小した。それに対し、アメリカ海軍の活動が拡大。これでアメリカは軍事的優位性を獲得したが、バイデン政権は軍事的優位性を使わない。
バイデン政権は中国企業への制裁を続ける様に見えるが、中国の貿易を遮断する動きを見せていない。それどころか、中国が電力不足で困っている時に、中国経済を復活させることを黙認。
中国税関、豪州産石炭に輸入許可 昨年関係悪化以来初めて=報道
https://www.epochtimes.jp/p/2021/11/82373.html
中国は石炭不足が原因で電力不足になったが、バイデン政権は中国を追い詰めることはしなかった。さらにバイデン政権は台湾との関係は曖昧で、中国が台湾侵攻しても、どうするかに関しては明言を避けている。
さらに来年開催される北京オリンピックに関しても、ボイコット検討を発言しただけ。チベット・ウイグル・香港・法輪功学習者への人権問題を外交カードには使わず、中国との全面対立を回避している。
■軍事的優位性を捨てたバイデン政権
国際社会では軍事を背景に外交を行うのが基本。日常生活で言えば、電話だけで攻撃的な発言をしても、自分の側に居るわけではない。だから電話の先で暴言を吐いても、自分が殴られるわけではない。この様な場合は、相手の暴言を無視することができる。
自分に実害が出ないと判れば人間は安心する。だが、相手が自分の側に来ることができれば?脅した後に自宅まで来て暴力を実行することが確実ならば、相手の発言を軽視できない。
軍事的に優位な国:国家戦略=外交×軍事
軍事的に劣る国 :国家戦略=外交×核兵器
だから各国は、軍隊を用いて外交を行う。だが国力が劣る国は軍隊を強化できない。これでは外交発言が無視されるので、核兵器で代用を行っている。この典型例が北朝鮮。
北朝鮮の通常兵器は時代遅れ。北朝鮮の兵器の多くが、第二次世界大戦をベースにした改良型。戦後の兵器を持っていることは確認されているが、それでもアメリカ軍に勝つことはできない。しかもトランプ前大統領の時代に明らかになったのは、夜間は電力不足でレーダーが使われないこと。
トランプ前大統領は北朝鮮に対して、軍事力を背景に外交を行った。その時にアメリカ空軍の爆撃機B-52を北朝鮮付近に飛行させたが、北朝鮮はレーダーを稼働させていない。こうなればアメリカ軍は、最新のステルス機を投入しなくても、北朝鮮に侵入して攻撃できる。これだけアメリカは優位だが、北朝鮮が核兵器を保有しているので、手を出していない。
■北朝鮮と中国への対応の違い
中国の人民解放軍の戦力は北朝鮮とは桁違い。しかも核保有国だから、アメリカが中国と対等に外交をするのは当然。だが軍事的優位性で外交を行うから、南シナ海・東シナ海で人民解放軍海軍の活動が縮小すると、中国の外交発言は効力を低下させるのも事実。
北朝鮮はアメリカに対して瀬戸際外交を実行。これに対してトランプ前大統領は、制限戦争で対応した。瀬戸際外交は、相手国にコストが合わない小さな戦争を売付け、相手国に譲歩させる策。制限戦争は、軍事で脅して相手国に譲歩させる策。
制限戦争論:キッシンジャー(アメリカ)
「交渉と戦闘は段階的に推進すべき。戦略の目的は敵政治意志の譲歩であって敵軍の撃破ではない」
制限戦争論の欠点は、軍事的合理性からかけ離れていること。何故なら、軍事作戦が外交から干渉と拘束を受けると勝利できない。実際に朝鮮戦争・ベトナム戦争では、アメリカは勝てる戦争で勝てなかった。
トランプ前大統領は軍隊を北朝鮮に見せ付け、北朝鮮に譲歩するように仕向けた。これはある程度成功し、北朝鮮とアメリカの首脳会談が成立。北朝鮮から核兵器を放棄させることはできなかったが、政治的意志の譲歩には成功している。ただし、バイデン政権になると、北朝鮮は核兵器開発と瀬戸際外交の再開を始めた様だ。
バイデン政権を見てみると、トランプ前大統領が行った中国包囲網を破壊する動きを見せている。アメリカ海軍を中心とした連合軍が形成され、人民解放軍海軍から、南シナ海・東シナ海の制海権を奪った。
これは軍事的優位性であり、本来ならば、中国に対して脅しを行う。これで中国共産党に政治的意志の譲歩をさせるはずが、バイデン政権は活用しない。アメリカ海軍が南シナ海・東シナ海の制海権を獲得したのだから、台湾にアメリカ軍の基地を置くと、中国に対する強烈な脅しになる。
何故なら、国外の軍事基地は国土の延長。仮に人民解放軍が台湾のアメリカ軍基地を攻撃すると、これはアメリカ本土への攻撃と見なされる。つまり、アメリカの国益が台湾に置かれているから、アメリカ軍を投入して守る意志表示になる。
アメリカが韓国と日本に基地を置いているのは、アジア防衛は大義名分であり偽りの看板。本音はアメリカの国益を守るため。だから在韓米軍・在日米軍が攻撃されたら、アメリカ本土への攻撃と見なして反撃する。
だがバイデン政権は台湾の立場を明言していない。仮に中国が台湾侵攻すると軍事支援することは明らかにされているが、アメリカ軍を投入して台湾軍と連合することは明言していない。
真にバイデン政権が中国との対立を目的としているなら、軍事的優位性を活用し、台湾にアメリカ軍基地を置く。さらに在台湾基地を、日本・イギリスなども使える様にするはずだ。何故なら一つの基地に台湾・アメリカ・イギリス・日本などの軍隊が存在すれば、その基地を攻撃するだけで、複数の国との戦争を意味する。
中国も核保有国だから、アメリカからの戦争は容易ではない。だが平時の軍事的優位性は覇権争奪の手段だから、人民解放軍海軍の活動縮小は、覇権争奪で成功した証。これだけで、アメリカは外交カードを獲得した。だがバイデン政権は、あっさりと無視している。
■中国との宥和
バイデン政権は親中派。北京オリンピックボイコットを臭わせているが、ボイコット検討であり決定ではない。しかも軍事力を背景に中国を脅すこともしない。中国に対して制限戦争をしないで、外交だけで対応。
これは宥和政策を選んだ証であり、チベット・ウイグル・香港・法輪功学習者への人権弾圧を、外交の武器にしない証。バイデン政権は中国による人権弾圧を黙認しているので、北京オリンピックに参加することになるだろう。
これは中国共産党が、トランプ前大統領から奪われた主導権を奪還したことになる。仮にアメリカが北京オリンピックに参加するなら、台湾が中国に占領されても黙認するだろう。人民解放軍が台湾軍に勝利することは困難。だがバイデン政権は台湾軍を支援してもアメリカ軍を投入しない。ならば台湾は、単独の戦争を強いられる。
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