「勇者の弁護人」(プロット)

時は国家歴1229年。戦火の爪痕も今は昔、約1300年前、かつての敵と敵が手を取り合って生まれた一つの王国があった。その名を「法治の国」。「勇者の国」と「魔王の国」の最終決戦において、事実上の最高権力者にして最大戦力たる魔王と勇者が相打ちとなって以後、侵攻の決定打を欠いた両国は融和路線に舵を切ることで、人間族と魔族による協力体制を敷き、開放された各地域の人種たちもあいまじりながら国家を建国。お互いの文明レベルと文化レベルを飛躍的に向上させていった。

が、そこは人間族を筆頭に魔族、エルフ族、ノーム族、ドワーフ族など様々な人や価値観の集まる世界。ゆえに人種・偏見・差別・ご近所トラブルなどによる争いごとの起きる世界でもあった。寄り集まった人々は考えた。人に判断を任せるから誤りが生じ曖昧な正義と曖昧な悪が跋扈するのだと。
ならば国を治めるのは人にあらず、法であるべき。各種族の賢者と呼ばれる人々がウン十年の歳月をかけ法を敷いた。
かつての世界を統治した勇者や魔王の知力やカリスマに劣らない最強の国家運営システムを、自分たちの手で作ることを目指して。

そして現在、勇者の称号も魔王の名も、いまや申請すればお役所で付けられるただの称号と成り果てた。
勇者の名をもって街を建設し、観光地化に勤しむ勇者(商人)、魔王の権勢を振るい、いち地方の町を統治する魔王(町内会長)、勇者たる武勇を示さんと、違法ギリギリのラインを攻めながら撮れ高を狙う勇者(動画配信者)、魔王は魔王らしくと高い山にわざわざ砦を構え勇者を待ち構える魔王(引きこもり)など、様々「勇者」と「魔王」が生まれ、やや格好はつかないが、世界は概ね平和のただなかにあった。

しかしいつの時代も身勝手な勇者や暴力的な魔王は現れるもの。法の下の平等の名において、今日も「勇者」が裁かれる。今日の自称勇者は民家への不法侵入のち窃盗の容疑で起訴され、挙句の果てにパーティメンバーの女性僧侶へのセクハラの前科と新米戦士へのパワハラ(係争中)もあるフダツキ勇者であるから堪らない。
二人の罪科を諮るはこれまた勇者(弁護士)と魔王(検事)。

「勇者であり勇者を弁護する弁護人」ことロウリィ・ローヤーは、今日も初代勇者の名にかけて、勇者の弁護人となる。

プロット
・ファンタジー×法廷モノ

・勇者や魔王の名前はいわゆる「その道のエキスパート」がどのような成果を成したかを役所でプレゼンし、勇者ないし魔王の名前を申請して通れば名乗れる世界。免許制である。だが剥奪も容易で、勇者(魔王)らしからぬ行為が見られれば一発免停、複数回起こせば剥奪である。
申請する項目はどのようなものでもよい。先に述べた動画配信者の勇者もいれば、200年引きこもることでその存在自体が希少となったため認定された引きこもりの魔王などもいる。

・人間も魔族もホビットもオークも全部「人」。これは国家統一当時、種族間の呼称統一の際に最多の種族が人間族だったためその他の種族にも浸透した。現在は人間族が顕著に多いというわけでもなく、長年の交雑でそこかしこに様々なルーツを持った人がいる。

・主人公勇者(弁護士)ロウリィ・ローヤー
弁護士勇者歴5年のベテランで主に勇者側の事件を専門とする。性格は怠惰で常に気だるげ、だが職務には一切手を抜かない。
実は初代勇者・アレクセイと初代魔王・エリザベッタの間に生まれた12代目の子孫。初代勇者と魔王は愛し合いながらも戦う宿命にあったが、戦いの中で力を使い果たし普通の人間族と魔族に戻る。これをもって「勇者と魔王は死んだ」こととなり、公には生存を伏せられ静かに余生を全うする。
ロウリィは自分の先祖たる初代勇者を大変尊敬しており、勇者の身の潔白はすべて自分が証明すると言って憚らない。

・ ライバル魔王(検事)エリス・ダーカー
同じく初代勇者と魔王の係累(分家の分家レベル)。初代本家の跡継ぎで幼馴染のロウリィを何かと目の敵にする。対抗心が勝ちすぎて本当は弁護士になりたかったものの、ロウリィも弁護士志望とのことで無理やり進路を変えた過去がある。

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