【ぶんぶくちゃいな】中国で「高学歴の貧乏人」が増産されている?

「中国は今、高学歴の貧乏人たちを生み続けている」

こんなショッキングな物言いが、中国の大学生就職市場でつぶやかれている。というのも、大学を卒業してもその学歴から期待できるような職がなく、仕方なく大学院に進んだものの、その後もさらに院生に見合う仕事がないという事態が起きているのだ。

以前も触れたが、中国は1999年から大学改革として、大学の入学枠を増やし始めた。その結果、当時100万人足らずだった大学新卒者は今年1076万人になった。さらに海外留学から帰ってきた人をそこに加えると、今年の新卒者はなんと1146万人に達した。

しかし、2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟して内外の中国経済への期待がうなぎのぼりになっていた2000年代最初の10年間に比べ、ここ10年間、特にこの5年間の中国経済は伸び悩み傾向が続いている。そこにコロナが襲来した。2000年の年初めから掲げられた「コロナゼロ化」という政治目標は、経済原理すらもほぼ無視したまま、今日ここまで続けられている。

中国経済の減速はすでに誰の目にも明らかになっている。

加えて、2000年代以降の中国経済において大きなパワーを発揮した数々のIT企業は、ここ数年さまざまな「打撃」を受けている。たとえば、2015年以降、国営銀行を睥睨するほどまでに成長した「アリペイ」や「WeChatペイ」などの第三者ペイメントサービスに対して、政府から国営銀行との連携など構造的な改革要求が突きつけられた。さらにこれらを運営する大型企業が展開するさまざまなサービスにも政府の監督が向けられ、これら企業の成長が頭打ちになりつつある。

特に2020年秋にアリババ会長のジャック・マーが国際金融会議の席上で、「我が国のリスクは健全な金融システムが欠けていること。我われは健全な金融システムを構築しなければならない」と講演したことが政府の逆鱗に触れて以来、IT業界は「冬の時代」に入ってしまった。アリババのみならず、ゲームで儲けていたテンセントも新ゲームライセンス申請への許可が下りにくくなった。Eコマースの新たな動向として注目された(バナナの叩き売りのような)「ライブコマース」と呼ばれるサービスも、次々に人気番組司会者が狙い撃ちされ、表向きは脱税などの罪に問われて失速してしまった(だが、彼らは罰金を納めただけで逮捕されたわけではない)。

またコロナの影響で次々とオンライン化して賑わっていた校外教育産業も昨年、たった一本の法令で突然非合法化されてしまった。世界的に注目される「フィンテック」でも、世界の最前線を走ると見られていた金融業界もまた、今や政府の厳しい管理下に置かれている。

これらはすべて、2000年以降急速に増えてきた高学歴者をどんどん吸収して成長を続けてきた分野である。特にここ数年大学を卒業する人たちはまさに「デジタルネイティブ」と呼ばれる世代であり、本来ならさらにIT化されていく社会で、国内産業を次のステップへと押しやることが出来るはずの人材だった。

だが、そのすべてに優先されるコロナゼロ化という国策、そしてそれと同時に、またそれを口実に進められたITやその周辺業界への管理強化、その結果閉塞状態に陥り、萎縮した社会で起きた経済悪化には解決の緒は見えない。

そうして既存の労働者ですら明日の糧への不安を抱える中、労働経験ももたず頭でっかちな新卒者の受け皿はほぼ消失してしまった。

●一流大学卒業生の「都落ち」院進学

ここから先は

3,063字

¥ 400

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

このアカウントは、完全フリーランスのライターが運営しています。もし記事が少しでも参考になった、あるいは気に入っていただけたら、下の「サポートをする」から少しだけでもサポートをいただけますと励みになります。サポートはできなくてもSNSでシェアしていただけると嬉しいです。