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【ぶんぶくちゃいな】中国外交生態系に大異変? 末端人事に見るその予震

今週の中国は注目の「大事件」が次々ほぼ同時に起こり、SNSのタイムラインが連日大いに盛り上がった。

まず最初に注目を浴びたのが、「中国NewsClip」でも取り上げた、河北省唐山市で起きた集団暴行事件だ。事件の経過はすでに現場の串焼き店の防犯カメラ映像が公開されて明らかになっているが、もともとのきっかけは店内で女性4人で食事をしていた一人に、隣の席に座っていた男が近づき、彼女の身体を触ったこと。その手を振りほどいた女性に、男が平手打ちを食わした。それに抵抗した女性と止めに入ろうとした同席の女性たちに、今度は男の仲間が手を出し始め、店内は混戦状態に。男たちは合わせて9人、現地のごろつきグループだったとも言われているが、標的にされた女性4人は店外に引きずり出され、そのまま殴る蹴るの激しい暴行を受けた。

防犯カメラの映像を見ると、最初に平手打ちを食らった女性が地面に叩きつけられて、囲まれて殴られ、蹴られたりする姿(後で明らかになったところによると、男たちの一人が手にしたガラス瓶で殴りつけたという)が捉えられていた。さらに、それを止めようとしたもうひとりの女性が跳ね飛ばされて、後頭部を店の前の階段に打ち付ける様子も映っていて、見る者をぞっとさせる出来事だった。

これがネットで公開され、激しい義憤を巻き起こした。「なぜ周囲の客は止めなかったのだ?」という声も起きたが、現場にいた人たちからは「男たちがけんか慣れしているのがひと目でわかった」「自分たちも女性を連れていた」「割れたガラス瓶で『近づくな!』と脅された」などの証言が相次いだ。

さらには、女性の一人が防犯カメラのない裏通りに引っぱりこまれ、2階から落とされたとか、車で轢かれたとか、服が切り刻まれていたとかいう話も飛び交っている。噂が独り歩きしているようで誇張が過ぎると思いたいが、現場でカメラを回す勇気のなかった人が後で公開した録音には聞く者をぞっとさせるような女性の悲鳴が記録されており、何かがあったことは間違いない。現時点で最終的に伝わっている口コミ情報では「4人のうち3人が病院で亡くなった」とも言われている。さすがにガセ情報であってほしいが、中国のメディアが彼女たちのその後にはまったく触れず、逆に政府や警察が始めた「地方ごろつき取締り」キャンペーン報道に力を入れているところを見ても、「凶多吉少」(あまり良い状況にはない)と思わざるを得ない。

続いて話題の的になったのは、昨年突然「義務教育中の学生の負担を軽減する」と銘打って実施された「双減政策」で、軒並み廃業に追い込まれた学習塾だ。約20年の歴史を持ち、学習塾の最大手だった「新東方学校」も同政策で大打撃を受け、倒産こそ免れたが今後の動向が注目されていた。それが今月に入って突然意外な方法で人々の注目を浴びている。こちらの話は近く公開される別記事にまとめたので、ぜひそちらを読んでいただきたい。

さらに政治をめぐる事件に発展しつつあるのが、「健康コード」事件だ。中国では新型コロナ感染拡大後、スマホに表示される健康コードなしには公共交通にすら乗れないというほど普及している。そのコードが突然、河南省鄭州市の4つの農村銀行に口座を持つ人だけ「赤」(要隔離)になるという出来事が発生した。中には他の都市から鄭州市に入ったとたん、それまでの「緑」が「赤」に変わるという経験をした人もおり、人によっては鄭州市以外で暮らしているのに「赤」になったおかげで身動きが取れなくなるという経験をした人もいる。

当初はその原因がわからず人々は戸惑ったが、次第に農村銀行との関係が明らかになっていく。そして、たとえその口座にわずか2元(約40円)しか残っていない人もその「魔の手」の対象になった。いったい「なぜ?」「なんのために?」「誰が?」「どうやって?」大量の第三者の健康コードを左右できるのか?という疑問が吹き出している。

現時点では民間ビッグデータ関係者らの証言や検証により、どうやら件の4銀行で資金不足が発生し、取り付け騒ぎを警戒した銀行側が口座主たちの足止めを図ったらしいという点が明らかになりつつある。だが、健康コードは基本的に医療衛生当局が管理しているはずであり、なぜそれを地方の農村銀行が意のままに操れるのか?というセキュリティ及び社会リスク問題が浮上、今も真相究明を求める声が続く。

こんな、万人が関心を持つ身近な騒ぎの裏にかき消されてしまったのが、ロックダウンから解放されたはずの上海で今も続く、あれこれの理不尽を巡る議論だ。突然封鎖されるマンション、経済活動は再開したものの企業が直面するさまざまな問題…なども気になるところだが、それを真剣に取り上げるメディアは激減した(もちろん政治的な意図もある)。

もう一つ、やはり影が薄くなったのが、秋に予定されている中国共産党大会に絡む話題だ。

今年の党大会は第20期に入る節目の会議であり、今後の5年間の方向性を決める重大な布陣が行われる予定となっている。本来ならここで国家主席を引退するはずだった習近平がすでに自らその任期制限を撤廃しており、続投は間違いなく、今秋の党大会はその「新たな時代」の幕開けとなる。それを前に地味ではあるが、少々興味深い政治ネタが見つかったので今回はそれをご紹介したい。

●中国外交部は「人材不足」?

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