【ぶんぶくちゃいな】政府vs民間企業:ハメられたのはどっちだ?!

10月30日午後、中国のSNS「微信 WeChat」(以下、「WeChat」)に配信された記事にタイムラインが沸き立った。

「深センの有名スタートアップ企業と著名海外留学起業家が、国内小都市の投資でこんな落とし穴の悲劇に見舞われようとは!」
「やはり一旦海外に出たら帰っちゃダメだ。どうしても帰国せざるをえないなら、北京、上海、深センのほかはどんなに良い条件を提示されても起業なんて考えちゃダメだ…」

知り合いのメディア人やIT関係者が次々とその記事をシェアしながらそうつぶやいていた。

爆発的にシェアされたのは、IT情報メディア「TMT Post」が発表した「不審な創業者逮捕、深セン賽龍の突然の死の謎」というタイトルの記事だった。

2017年7月20日午後、事前になんの兆候もないまま、2人の裁判官が留置所を訪れ、室内灯もなく、広さは6平米にも満たない取調室で代小権に判決を言い渡した。「賽龍公司339万元脱税」に有罪判決が下り、その法定代表者の代小権を懲役2年を命ずる」
代小権は訊問席で呆然とし、顔を両手の中に埋めた。
そしてぼんやりと一言つぶやいた。「控訴する」

まるで映画のファーストシーンのような出だしだが、ここまで読んだわたしが真っ先に思ったのは「え、裁判官が留置所に出向いて判決を下すなんてことがあるの?」だった。

これはこれで都市伝説になりそうな話だが、この点について、そこから引き出された論証記事や書き込みで一切問題視していないところからして、中国ではよくあることなのかもしれない。

やっぱり中国は我われの常識を超えている。だが、この記事が引き起こした「異常事態」は、そんな小さな問題になど吹っ飛んでしまうほどの「大事件」だった。

●「罠に落ちた」民間企業

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