《ヨーカ堂、北京で相次ぎ閉店 「事業の清算考えている」》(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASJCP4WRDJCPUHBI01Y.html
この記事の写真に出ている三里屯のヨーカ堂は、わたしが北京で住んでいた家の徒歩圏内。時々行っていましたが、残念ながら日本のパッケージ食品を買い求める以外、価格的、そして中国人の好む品揃えという意味ではまったく他の店には太刀打ちできませんでした。それが4−5年前の話。果物とか、この値段で誰が買うの?というレベルでした。
ですが、大規模撤退はNewsPicksで是枝さんがコメントしているように、これはヨーカ堂云々ではなく、日本がどうのこうのでもなく、中国の消費市場の変化を受けたものです。
ある記事によると、今年に入って2000平米以上の面積を持つ大型スーパーやモール22社が合計45の支店をクローズしており、閉店面積は合計60万平米に上っているとのこと。かつて「外資デパートNo.1」ともてはやされた、パークソン百貨(本社マレーシア)も含まれています。中国の大型資本による店舗も閉店してますから、外資がーとか日本がーとかいうお話ではないですね。
NewsPicksのコメント欄では「尖閣が」とか「反日が」とかおっしゃっている方がおられますが、北京では実際に反日デモがあった2012年9月以降の1年間、ラーメン屋を含む日本料理屋が雨後の竹の子のように増えました。同時に日本人が足繁く通っていたそうした店に中国人客がどっと増え始めました。もし反日が分岐点だというのであればこのことをどう説明するのか。
またこの記事は北京のヨーカ堂に特化していますが、実際には大型店の閉店は北京だけではなく、西安、重慶、成都、広州、深セン、長沙、南京、銀川…と各地で起こっています。
山手さんがおっしゃる現場の現実感は事実だと思いますが、それはつまり、消費者の嗜好の変化に大型店がついていけなくなったということでしょう。特に2012年反日デモを持ち出すのであれば、あのむやみな暴力的なデモに中産階級がすっかり萎えてしまい、個人的な好みによる消費に走るようになったという点が和食レストラン隆盛の背景にあります。
そんな消費の変化とともに「個人的な嗜好」に目覚めた中国人客に見合ったサービスを提供できなかった結果が大型店の撤退を引き起こしているといっていいでしょう。
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