【読んでみました中国本】非常事態下を生きる人たちの日常を描く:金順姫著「隠された中国:習近平『一強体制』の足元」
昨年11月にわたしもご紹介した「中国本」、陳浩基著「13・67」(天野健太郎訳)が快進撃を見せている。1月29日の時点(以下同)でAmazonの売れ過ぎランキング「中国文学」で2位、「アジア文学」部門でも2位につけている。特に「中国文学」の1位は魯迅短編集なので、実質的には中国現代文学の1位といえる。
さらに、さらに、アジアや中国の枠を取っ払った「ミステリー・サスペンス・ハードボイルド」部門では99位と100位入りしているのもすごい。日本ではミステリーファンの層は厚く、目も肥えた人が多いはずだが、その中でアジア作家の作品が100位以内に入るなんて、今までなかったのではないだろうか。
こうした形で中華本が、ジャンルにこだわらない一般の読書家に読まれるのはとても良いことだ。
わたしもこの「13・67」を読み終えた直後から、台湾出身の作家、東山彰良さんの直木賞受賞作「流」を読み始めた。大人になってからほとんど小説を読まなくなっているわたしにとって、小説の二連戦はもう特筆すべき「大事件」である。まぁ、冬は本を読むために長風呂できるという背景もあるのだが(笑)。
「流」といい、「13・67」といい、そしてやはり昨年取り上げた温又柔著「真ん中の子どもたち」といい、近いようでその実まだ遠い、中華圏の人たちの複雑な歴史や現地の事情、そして心のひだに触れることができる作品がやっと広がり始めたことに安堵している。これをきっかけに出版社にも頑張ってもらい、今年はもっともっと新鮮な視点に出会いたいものである。
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