【ぶんぶくちゃいな】今どきの世相を反映する、中国・香港で話題のことば

昨年来の中国関連の話題といえば、経済不振だとか、中米の衝突だとか、戦狼外交だとか、台湾侵攻騒ぎだとかいった重苦しいものばかりでどうも「楽しいこともなかりけり」状態だ。

別に決して「おバカな」「中国アルアル」などを探し出して大笑いしたいわけではなく、以前と同じようにSNSなどを眺めていてわくわく、はらはら、ドキドキ、あるいはクスッとできるような話題が激減してしまったのだ。筆者の友人たちが筆者と同じく年をとって心配性になってしまったのか、それとも偶然彼らだけが不運に巻き込まれているせいなのかとも思わないでもないが、流れてくるニュースを読んでいてもやはり、「これは…!」と気分を高揚させられる話に出会えなくなってしまった。

これはSNS上だけの状況ではなさそうなのだ。

昨年12月に流れてきた記事のタイトルに「国産ドラマはラブロマンスを失いつつある」とあった。読んでみたら、ラブストーリーはいつの時代もドラマや映画の世界で最も人気のテーマだが、最近の中国ではその描かれ方が「ありきたりすぎる」「形式的」なものになっていると、筆者が嘆いていた。

その「形式」とはたとえば、ストーリーで描かれるカップルは常に、男性主人公(「男1号」)と女性主人公(「女1号」)が結びつき、そして「男2号」(男性のトップ脇役)と「女2号」(女性のトップ脇役)が、「男3号」と「女3号」が……というあからさまなルールになっているケース。

さらに、ドラマの設定はなかなか面白く、たとえば男女ともに長年武術を磨いてきたという孤高の主人公たちが、一旦恋愛となると「ほぼ強制的にそれまでの知性を失ってしま」ったり、その出会いが「男は走る馬の上からある女性を見初める」といった「型にはまった偶然」だったりと、ストーリー設定はどれほど面白くても恋愛がからみ始めると「一挙に白けてしまう」という(残念ながら、記事で紹介されていたドラマを筆者はひとつも見ていないので、「又聞き」でしか書けない)。

加えて、そのシ―ン設定の「狭さ」。たとえば、学校が舞台なら先生に恋し、会社なら社長に恋したり、軍事訓練でも教官に恋して、病院に行くと医者に恋し……「現実生活ではほとんどありえないシチュエーションばかりで、まるで世の中で恋愛対象にならない相手の存在は不要だとでもいう構成になっている」と、上海復旦大学の社会学教授も分析している。

そして、こうした「視野の狭さ」が現実にも存在するとして紹介されていたのが、2021年に行なわれた大学生を対象にしたアンケート調査の結果(https://x.gd/a4NL0 )だった。それによると、なんと4割を超える大学生が「恋愛するつもりはない」と答えたらしい。

恋愛については男女ともに約45%前後が「するつもりはない」という答え、しかしもっと興味深いのは「結婚するつもりはあるか」という質問への答えだった。男子学生の74%は「ある」と答えたのに対し、女子学生で「ある」はわずか約49%と半数以下……中国の人口減少が止まらないのもさもありなん、である。このギャップはいかに埋められていくのだろう?

もちろん、未婚で子供だけ生むことも生理的にはできなくはないが、これまで中国では長らく未婚者の出産はご法度だった。最近になってやっと人口増大を目指して未婚者の出産(特に病院での分娩)が認可されたものの、高齢者を含む世間の目はまだまだ未婚出産には冷たいと聞く。

そんなところに、1月18日には昨年の人口統計が発表されたが、年間出生数は902万人と900万台の「壁」を踏みとどまったものの、年間死者数は1110万人となり、総人口における減少の動きを止めることはできなかった。

……ああ、ほらまた暗い話になってしまった。

とはいえ、世相が暗くても人々は日々を生きている。そんな日々の営みを少しでも愉快に過ごせるようにそれぞれに工夫を凝らしているのは間違いない。今回はそんな中国人社会で最近流行っている新語についてご紹介したい。


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