【ぶんぶくちゃいな】ロシアW杯:勝者はフランス、敗けたのは…華帝

フランスが勝利して終わったサッカーW杯。優勝戦も最後を飾るにふさわしい大熱戦だった。わたしの住む福岡では15日がちょうど博多山笠で一番盛り上がる最終日だったこともあって、最終行事の追い山を見てから打ち上げを経てワールドカップへ…と予定を立てた人も少なからずいたらしい。特に今年は翌日が海の日でお休みだったから、海の日ならぬ山の日、あるいはサッカーの日(代休)気分で楽しめたのは良かった良かった。

しかし、自国のチームが出ていなくても大盛り上がりだった中国サッカーファンにとって、今年のW杯は「良かった良かった」だけでは終わらなかった。

ネットポータルサイト「網易 NetEase」(以下、網易)では、フランスチームと中国地区独占オンラインメディアパートナー契約を結んでいたため、事前に「フランスが優勝すれば翌日は全社員休んでよし」という通知がなされていたそうだ。その通知のコピーには、「でもフランスが負けたら出社な」とカッコ書きで注意書きされていて、ネット企業らしい柔軟さを垣間見て、思わず笑ってしまった。

ついでに書くと、この網易の創設者、丁磊氏は中国富豪ランキング5位に名前を連ねるIT富豪のうちの一人だが、2009年に「養豚計画」を発表して、産業界を困惑させた人でもある。

「養豚」、比喩でも何でもなく、本当に農場を作ってブタを書い始めた。最初は浙江省の経済開発区の土地を使って1万頭を養殖するという計画で、結局その後その用地が地域の環境衛生部とトラブルを抱えたり、計画設立者に名を連ねた2人が離職するなどして規模はかなり縮小したらしい。だが、その後食品不安などの話題が社会を席巻するようになり、この丁氏養豚計画はそれはそれで「先を見据えた計画としてはありかもしれない」と言われたりもしている。

まぁ、そんな奇才が運営するIT企業もあるという話である。こちらは良かった話。

そしてもう一つ、W杯の話題を盛り上げたのが、広東省中山市に拠点を持つキッチン設備メーカー「華帝 Vatti」(以下、華帝)だった。

フランス優勝の翌朝、中国のSNS「微信 WeChat」(以下、WeChat)を開いたら、「華帝が返金を始めるぞ」という書き込みがずらずらずらずらと並んでいた。

「華帝ってなに?」

これがわたしの最初の疑問だった。「華」がついているので、明らかに中国国内のなにかなのだが、誰もそのことについてそれ以上触れていない。とにかく、華帝が返金、華帝が返金、多くの友人たちがその一言を流しまくっていた。

ニュースサイトを開いて初めてそれが前述のキッチン設備メーカーで、今年3月にフランスのナショナルチームのスポンサーとなり、W杯でフランスが勝ち進むのに合わせて、「フランスが優勝したら、6月1日から7月3日までに購入した華帝ブランド指定製品を全額返金する」というキャンペーンを展開していたことを知った。

中国国内のこのキャンペーンのイメージ効果はすごかったらしい。ITメディア「虎嗅網」によると、フランスの勝利が確定したあとに人々の脳裏に真っ先に浮かんだのはこのキャンペーンスローガン。人気SNSの一つ「微博 微博」(以下、ウェイボ)の「人気検索キーワード」は試合後数時間は試合に直接関係する単語がトップに上がっていたが、夜明けとともに「華帝」の検索回数がW杯関連の用語の多くを上回り、2位にまで上り詰めたという。

●「フランス優勝で全額返金!」

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