【ぶんぶくちゃいな】立場の秋、りんごの冬 香港メディア界の試練
今年の秋、香港では重苦しい裁判が続く。
8月29日、その始まりを示すかのように、香港区域法院はネットメディア「立場新聞」(すでに運営停止)の運営母体だったBest Pencil Hong Kong Limited(以下、ベストペンシル)と、元編集長の鍾沛権・被告とその後任を務めた林紹桐・被告の2人に対し、「刑事罪条例」に基づく「扇動刊行物公開あるいは複製共謀」容疑において有罪の判決を下した。
また、9月3日には、2020年の最高議決機関である立法会の議員選挙に向け、民主派が候補者絞りのために行った予備選挙関係者による情状酌量のための最終陳述がやっと終わった。この事件では予備選挙を参画したことで、55人が「香港国家安全維持法」(以下、国家安全法)に基づく「国家政権転覆共謀」容疑で逮捕され、そのうち47人が起訴された。
この予備選挙裁判はとにかく被告の数が半端ないため、初日の起訴事実確認は14時間の長丁場となり、その間ずっと待機を迫られた複数の被告が病院に担ぎ込まれるという事態も起きた。被告らはさらにその後3年間、意見聴取などに対応しながら拘束されたまま過ごし、あまりの長引きように海外からは「人権侵害」の批判も受けている。
その間、次々と罪を受け入れる被告が増え、最後まで無罪を主張し続けた被告はわずか16人にまで減少。今年5月30日にその16人に対して、無罪となった2人を除き、14人に有罪判決が下った。そして、7月末から行われた45被告による量刑決定前の情状酌量陳述が終わり、改めて量刑判決日の決定を待っているところだ。
また11月には、人気大衆紙だった「アップルデイリー」(蘋果日報、りんご日報)を出版していたメディアグループ「ネクスト・デジタル」(壱伝媒)の創業者である黎智英(ジミー・ライ)被告に対し、「香港国家安全維持法」(以下、国家安全法)に基づく「外国勢力との共謀」容疑、「国家安全への危害」容疑、さらに「煽動出版物の印刷・発行」容疑に対する裁判(以下、黎被告裁判)が始まる。
この「アップルデイリー」関係では別途、すでに2022年11月に元副社長、元編集長、元主筆ら6人に「外国勢力共謀」容疑で有罪判決が下されている。しかし、黎被告裁判においてこの6人の証言が必要不可欠とされていることから、6人の量刑判決は同裁判終了後に言い渡されることになっている。つまり、6人の被告もまた、有罪判決を受けながらこの2年間ずっと量刑未決のまま、拘束され続けている。
この立場新聞、予備選挙、そしてアップルデイリーに絡む裁判(実際には、「関係」裁判はさらに複数に渡る)は、2020年の国家安全法施行後における2019年デモに関わる三大大型裁判とみなされている。というのも、その一つ一つにおける判決の内容はそのまま、「ポスト国家安全法」時代の香港における「発言の自由」を「規定」するものとなるはずだからだ。
その意味で今回は、掲載された具体的な記事とその編集意図を巡って弁論がかわされた、立場新聞裁判の判決とそれが意味するものをまとめておく。
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